巨大リグの原油市場へのインパクト

 原油価格下落の一端となったシェールオイル事業のリスクの高さは相次ぐ日本企業の投資失敗や稼働リグの減少で明らかになった。しかしこれまでのところリグ数の減少は生産量の減少に結びついていない。取引価格が下がると生産量を増やして採算性を確保できる掘削企業がより強くなり、採算性の低い企業が市場から退く、「格差」ならぬ「淘汰」が強まっている。

 

 掘削基地の総数を減らして生産量を上げるためには個々のリグの規模を上げる必要がある。ここでは巨大化する最新の掘削基地であるShell Perdidoについて説明し、何故リグ数が減少していてもシェールオイル生産量が減らないのかを考察したい。

 

perdido 08

 

 Perdidoの概要は固定場所はメキシコ湾、掘削海底は2,450mでシェルオイル掘削用の世界最大の掘削基地である。利権はShell、Chevron、BPがほぼ1/3ずつ所有するメジャーのシェールオイル生産の拠点となる。生産量は100kバレル/日で2010年の3月31日から稼働した。

 シェールオイルはシェール岩盤が地面から2000-3000mの深層にあるため、垂直に掘削しそのあと1-2kmに及ぶ横穴を掘るが、海底掘削では3000mの水深での掘削技となる。このためにはNoble Clyde Boudreaux のリグが使われる。6基の1.35万馬力の発電機で重量2万9千トンの巨大なドリルを回転させて掘削する。

 

 これまで洋上リグの油田間はフレキシブルチューブのパイプラインで結ばれて海上輸送されるが、シェールオイル掘削は水深が深くフレキシブルパイプが使えない。そこでPerdidoでは22基の油田間を海底ネットワークで繋ぎ既存のパイプラインを流用する技術を開発した。シェールオイルを海岸に運ぶパイプラインを新たに敷設すると382kmになる。海底の既存パイプラインに接続するためにロボットが8.6mの長さに渡って切断し、Perdidoからのパイプラインをつないだ。

 

 Perdidoはフインランドの造船所で2.2万トンの基本部分が建造され、1万3千km以上離れたメキシコ湾まで曳航され、現場でリグが組まれた。掘削機を含めると最終的には5.5万トンになった。2010年以降、「世界最大の洋上掘削基地」としてメジャー3社のシェールオイル生産を担っている。規模の巨大化で採算性を上げるしくみは「格差」どころか同業者の「淘汰」となり、シェールオイルリグの減少分は集約でカバーされたことで生産量の減少は食い止められた。

 

 日本企業のシェールオイル掘削事業への投資がことごとく失敗している理由は、生産量を増やして採算性を原油価格下落に対応できない弱小企業に投資したことにある。メジャー支配を避けての原油確保が目的なら徹底的に将来性を見極める必要があった。投資の中にはテスト掘削すら後回しにしたものもあるというのは驚きである。高度成長時代に中東を飛び回って活躍した目利き揃いの商社もあらためてエネルギー市場のリスクを(数千億円の代償を伴って)実感したことだろう。

 

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