水素社会を支えるか−第4世代原子炉

 燃料電池車(FCV)の販売をトヨタが開始した。一方で2020年オリンピック村には水素が供給されて、定置型燃料電池(エネファームなど)による発電で、未来の水素社会の試金石ともいえるミニ水素社会が近いことを思わせる。燃料電池には水素以外の天然ガスも使えるが、温室ガスを出さないクリーンエネルギー源として期待されている。

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 一方で水素自身の危険性やステーション設置コスト、何よりも水素供給能力に疑問の声もあがる。しかし現実にソフトバンクグループと米国Bloom Energy社の合弁会社Bloom Energy Japanは出力200kWの燃料電池モジュール、Bloomエナジーサーバー(200kW、上の写真)を組み合わせて最大30MW規模まで拡張できる発電システムを販売している。実際大阪府では6モジュールで合計1.2MWの発電システムを設置する予定だが、電力料金は25円/kWで初期コスト不要で受電できる予定だ。(写真提供:Bloom Energy Japan)

 

 社会全体をどこまで水素化できるかは未知数だが、Bloomエナジーサーバー燃料としてバイオガスや都市ガスを使え、低コストのセラミック材料を用いた固体酸化物燃料電池(SOFC)で効率の高い発電が可能となると、少なくともコストの安い天然ガスやバイオガスなら現実的な燃料電池社会が視野に入る。一方で燃料電池車(下の写真)のように効率や排気ガスの観点で水素社会という概念は捨て難い。

 

Toyota mirai trimmed

 

 関連のなさそうな水素社会と次世代型原子炉が深く関わるかも知れない。現在の原子炉は第3世代と呼ばれる加圧水炉(PWR)が中心である。代表的なものがウエステイングハウス社が開発したAP1000である。AP1000は同社が開発したAP600を高パワー化したもので、このシリーズの特徴は事故時の炉心冷却機能にある。

 

 従来型の原子炉では、炉心加熱等の事故発生時に、外部交流電源あるいは非常用発電機で動くモーター駆動のポンプや、自動的に起動する無電源の強制冷却システムなどで安全な冷却を確保する。これに対してAP600では外部ポンプを使わずに、上屋にあらかじめ溜めておいた冷却水を重力で送水するなど、自立した炉心冷却機能を持つ。

 

 AP1000は加圧水型原子炉AP600の発電能力60万kWを100万kWに引き上げたもので、現在は東芝の子会社であるウエステイングハウス社は改良を続け、同社の原子炉販売の中心機種となっている。ウェスティングハウス社はジョージア州ボーグル原発で2基のAP1000原子炉を建設することになり、オバマ政権は連邦ローンで資金調達を支援する決定を行なった。これによりスリーマイル島以来停滞していた原子炉新規建設が日の目をみることになった。しかし現実は厳しく環境団体と住民が事業受注企業を相手取り訴訟に持ち込んだため、最新型といえども従来型原子炉の新規建設は茨の道である。

 

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 これに対して第4世代型原子炉は超高温原子炉VHTR(Very High Temperature Reactor)と呼ばれる(上)。この原子炉は従来型と異なり熱源部分で600-1000度近い高温になる。そのため熱効率の高いガスタービン複合発電(注)が可能で、ヘリウムガスを1次冷却剤とするガスタービン原子炉が知られている。ヘリウムガスタービン炉は原子炉心の熱容量が大きく、放射化しないヘリウムガスを冷却剤に用いるために安全性も高いとされる。稼働中の試験研究炉には日本の高温工学試験研究炉(HTTR)、出力30MW、中国のHTR-10、出力10MWeがある。両方とも熱源は900-950度である。

 

(注)複合発電
ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式。最初に高温ガスの圧力でガスタービンを回して発電を行い、その排ガスの余熱で水を沸騰させ、蒸気タービンによる発電を組み合わせる。


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 超高温原子炉は高温を生かして天然ガスから水素製造に使用可能(注)で大規模な水素供給施設を原子炉に隣接して設置すれば水素社会に水素を供給で きるようになる。 燃料電池車が主流になるかどうかは別にして、水素社会が現実化するためには次世代型原子炉に隣接した水素供給基地が望ましいが、原子炉 も水素もリスクもあるので、諸刃の刃なのかも知れない。科学技術にとって試練の時なのかも知れないが、危険な対象を使いこなす未来はそう遠いものではなさそうだ。

(注)水から水素を(電解で)製造するには550-850度の高温が必要で、天然ガスからだと300-700度の温度が必要とされる。熱源と電力を同時に供給できる第4世代型原子炉は水素供給施設と発電所を一カ所にまとめることができる。水素を水からないで天然ガスからつくるなら、中東から高いコストの天然ガスを危険な海域を通って輸送するより、ロシアの極東地区からパイプラインで輸送した方が有利であろう。

 

 

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