基準値は緩和されるか−1mSvの意味

 福島第1原発事故の収拾の一環として原発付近の除染の目安である政府指針の1mSvを巡って、IAEAの発言が波紋を投げかけるとともに、除染の効果対費用比の拡大に伴う財政的見地から見直しの議論が高まっている。

 

 福島県の除染現場視察後にIAEAのフアン・カルロス・レンティッホ代表は10月21日、東京都内での記者会見で「年1mSvにこだわる必要はない」と語った(毎日新聞)。以下に示すようにドイツの平均被曝量の内訳は人為的なもの(医療)と自然放射能が半々である。

 

Average-radiation

 

「年1-20mSvミリシーベルトの間で各国が独自に目標を選べば良い」というIAEAの見解は、ICRPの指針(注)に沿っている。これを受けて原子力規制委員会の田中俊一委員長は原発事故があった場合、20mSvまで許容した方がいいというのが世界の一般的な考え方だ」とコメントし、政府部内でも年1mSvの見直し議論が始っている。

(注)外部被ばく線量が0.2mSv以下、内部被ばく線量が0.8mSv以下、合計で1mSvが望ましいとしている。 

 

Fukushima I radiation Fukushima Prefecture 2 March 2011

 

 年1mSvは帰還に向けた「安全基準」との認識が定着しているため、この基準をクリアしてからの帰還は当初の想定を遥かに上回る時間と予算、労力が必要となり財政難を悪化させる危惧がある。

 年間の基準値を1mSvにするかどうかは、今後、低線量被曝の医学的根拠を明らかにし、財政や住民の意志を反映させて妥当な緩和措置がとられる可能性が高い。ICRPの非常時以外の許容値、年1mSvはあくまで通常時の一般住民に対する値である。ちなみに原発作業員の年間許容量は20mSv、自然放射線の平均積算値は2.4mSvである。

 

 とはいっても子供を持つ親としてはこれまでの許容値が一気に20倍高くなっても、その地域で子供を育てなくないのは当然であるので、帰還の現実味と転居の両方の施策が必要になる。

 

BWR-diagram-v2

 

 一方、TEPCOは福島原発3号機最上階の除染作業で、当初の線量は高い所で100mSv/hを超えていたため、除染後の線量の目標値を1mSv/hと決めたが、 遠隔操作ロボットを使って壁や床に高圧の水を吹きつけ、表面を削って吸引したが、線量は最大で60mSv/hで目標値を達成できなかった。今後の除染によっても現実的には1mSv/hの達成が困難とされている。原発建物の作業基準1mSv/hが達成される見込みがないのであれば、作業の完全無人化を目指して廃炉工程表の見直しが必要である。

 

Minamisoma Radiation 2011-11

 

明確な指針のない低線量被曝の観点から除染の指針の見直し問題についても様々な立場でこの問題を取り上げて行きたい。

 

フォローアップ(2014.12.31)

原子力規制委員会は10日、原発で重大事故などの緊急事態が発生した際に、現在100ミリシーベルトとされている作業員の被ばく線量上限値を引き上げる検討を始めた。

記事元:時事通信

 

コメント   

# 柏の住人 2014年12月08日 10:39
子供を持つ親の気持ちとしては年1mSvでも嫌です。放射線の環境くらいは選ぶ権利があると思います。でも 帰還というのは現実的でない\ので、過疎地に転居してもらってその地方を活性化してもらい、住宅は半額援助 の30年ローンにしたら不動産も活気がでるんじゃないかな。
# toshiさん 2015年01月06日 21:21
IAEAが今年10月に視察にきてコメントしたとのこと。
元記事を確認したいです。
情報源を記載して頂けないでしょうか?
# 編集者 2015年01月07日 10:33
とりあえずですが
http://blogs.yahoo.co.jp/kyomutekisonzairon/66706749.html

http://d.hatena.ne.jp/ssaitoh/20131105/1383623156

元記事URLは何故か消えていますね。
# toshiさん 2015年01月10日 11:52
有難うございます。

勘違いしていました。一年前の話ですね。

その後は、
これに絡んで、何か、進展があるでしょうか?

ーーー
放射光施設や、漏えいが考えられない施設で、
事故の発生を防ぐために
検出限界に近いレベルでの規制を行うのは当然ですが、

原因が明らかな現象に対して設定する数値としては
無意味の数字は、改めるべきと思います。

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