シェールオイル増産と原油価格

 シェールオイル革命と呼ばれる産油ブームに湧く米国は、ついに産油国の仲間入りを果たしたばかりでなく、原油価格にまで影響を及ぼした。シェールオイルによる原油増産政策は中東からの原油の輸入を減らし、独立性を確保するためのものであった。

 しかし一国の問題にとどまらず、原油の供給過多で原油価格の下落につながり、世界的な規模で各国のエネルギー市場に影響を及ぼすこととなった。世界的な傾向である、原発を再生可能エネルギーに置き換える動きに対して、自国の原油算出を逆に増やして、化石燃料依存を強めようとする米国の意図は何なのだろうか。本コラムでは原発および再生可能エネルギーとの関連から、シェールオイルの増産の影響について緊急に取り上げることとした。下の写真はシェールオイル採掘現場である。

 

Shell insitu

 

 シェールオイルは単純な掘削による原油生産のイメージからほど遠い。水圧破砕という地下深部で水圧で固い岩盤に割れ目をつくり、砂や特殊な化学物質で、穴が閉じないようにした上で、しみ込んだ原油を絞り出すからだ。また一カ所では枯渇するため、絶えず場所を変えながら原油を得続ける。そのため膨大な淡水資源が必要となる。水資源が豊富である米国を除けば、埋蔵量は豊富でも、乾燥地帯では水資源の確保が困難である。また水資源の消費や掘削による地盤の空洞化で地震が多発する可能性が指摘されている他、水と一緒に化学物質による環境汚染の問題も深刻である。下の模式図はシェールオイル採掘の仕組みである。

 

HydroFrac copy copy

 

 統計上はシェールオイル掘削を強引に軌道に乗ったかのようにみえるかも知れない。何故なら統計上は米国内のシェールオイル生産量は420万バレル/日に達した、国全体のオイル生産量が過去最高の850万バレル/日で、初めて輸入量を上回ったからである。つまり米国は生産量が輸入を越える産油国となったのである。

ピ ークを過ぎたとされるサウジアラビアの原油生産量は1200万バレル/日である。サウジにとって、また中東のオイル産出国にとってまさにシェールオイルによる米国産油国化は邪魔な存在になった。原油の価格が落ち込んでいる理由は(ドイツや日本のように原発を化石燃料で置き換える国を除き)温室ガス排出規制で、原油の需要自身の低下したこと、米国向けの原油が必要なくなり他の国に回され、供給過多となったことなどがある。

 シェールオイル増産で米国の原油輸入は激減し、中東・アフリカの産油国がアジアに向けられ、現在の原油価格の下落をもたらしている。これまでは原油価格が下がれば、OPECが介入して減産に入るのが一般的だった。しかし今回はOPEC主導権を握るサウジにとっては、減産すればエネルギー市場における影響力が低下し、米国優位を助けることになるので、避けたいのが本音である。

Crude oil prices in dollar and euro-1

 それでは現在の原油価格を決めている(米国の)シェールオイル採算性は将来性があるのだろうか。ここまで増産につぐ増産で採算性を上げて来た米国だが、損益分岐点は1バレル80ドルと言われる。現在は90ドル程度で推移しているが80ドルを下回った場合に、採算性がとれなくなるシェールオイル事業者が出始めるとみられるが、どこまで持ちこたえるかは不明である。

 

 米国は規模拡大で採算性をとろうとすると同時に、輸入コストがないアドバンテージを最大限に生かして、原油価格の低下に対抗するであろう。シェールオイル増産は原発にも再生可能エネルギーにも頼らずに、原油消費社会が持続可能となるという皮肉な結果をもたらした。化石燃料の枯渇を40年先に控えた大国は生産と消費に歯止めをかけることはできなかったのである。エネルギーとはそういう物なのかも知れない。残り少なくなっても無くなるまで使い切ろうとする人類の強欲さにもあきれるが、11月27日のOPEC総会の結果が注目される。

 

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