温室効果ガス削減ーIPCC警告の現実味

 地球温暖化が産業革命後の化石燃料の燃焼による温室効果ガス(CO2)によるから、急速な温暖化を避けるには排出量を規制するべきだ、という考えは現代人のドグマのようで、反論の余地のないものとされる。科学的根拠は平均気温と大気中のCO2濃度の相関と、シミュレーションでそれが再現されたことによる。しかし科学の世界ではドグマと考えられていたものが後に覆ることが知られている。とにかく地球全体の平均を0.1度の精度で議論しているのだ。

 

Fluctuations in temperature and in the atmospheric concentration of carbon dioxide over the past 649000 years

 

 上図のように相関があることだけは確かなのだが、主従関係、メカニズム、信頼できる予測といえば、「議論は済んでいる」とするのは早計のように思える。LNTの議論同様に事象の初期のパラメーター変化はゆるやかに進行するので、初期データから長期に渡る変化を予測することは一般に困難である。ここではIPCCの第5次報告書の警告の意味を考えてみる。

 

Global Warming Map

 

 その他にも気候の温暖化(上図:NASAデータ)に寄与するメカニズムは多々あるものの、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はほとんどが気温上昇が温室ガスによるとしている。その一方では観測精度に一部誤りがあり、太陽活動など地球環境の長周期変動とする説、海水温度上昇に伴う海水中のCO2蒸発や化石燃料使用による人為的放熱の結果とする等の反対意見も多い。

 排出枠を取り決め、排出量が規制枠より少なかった国や企業と、排出枠を超えて排出した国や企業との間で取引する制度を「排出取引」という。背景には温室ガス規制が各国の思惑で一向に進まない一方で、温室ガス排出権の売買が横行し巨大ビジネス化している。ただし排出権を購入できてしまえば削減努力につながらないので、削減に消極的な国や企業の時間稼ぎともとれる。争点となっているのは最近の温暖化が最新10年間で鈍化あるいは飽和したようにみえる、IPCCの予想(シナリオに依存)より低くなった点である。下図に示した気温とCO2(米国、1960-91 temperature datum. -Isonomia/Bugsy)では確かに10年間は安定しているようにもみえる。

800px-GlobalTemperaturesSince1991

 

 IPCCは第5次統合報告書を公表し、その中で温暖化の主な原因が人為である可能性が極めて高い(95%以上)と断定するとともに、産業革命後の気温上昇を2度以内に抑えるためにはCO2の総排出量を約2.9兆トンにとどめる必要があるとした。またこれまでに排出されたCO2は1.9兆トンで残りは現在の排出量が続けば30年で許容量に達するという。

 報告書は、世界全体の温室効果ガス排出量を50年に10年比で40-72%、2100年には80%以上削減する必要があると指摘している。現状の排出量が続けば21世紀末の世界の平均気温は2.6-4.8度上昇し、これによって海面は最大82cm上がるとともに、穀物生産が落ち込み必要な食糧の確保に支障をきたすとしている。この上限は最も効果が大きい場合のシミュレーションの予測値で、第4次報告書では6.4度であった。このことは温暖化の鈍化に対応したように思えるが、データ重視の観点からはさらに予測の信頼性を上げて行くことが必要という印象である。

 IPCCの報告書を深刻に受け止めた結果、自動車の脱化石燃料化に拍車がかかっている。HV→EV→FCVというシナリオに沿ってゆっくり進みつつある。また空気モーター車や海水電池、アルミ空気電池等のダークホースも注目を集めているため、どこかで切り替えが加速されるかも知れない。しかし自動車の占めるCO2排出量に比べれば、石炭火力発電の割合(27%)は高い。再生可能エネルギー発電所を増やすとともに、家庭や発電所、工場においてコージェネ化など社会全体の取り組みが必要となる、政府はそのため「水素社会」へ舵を切りつつある。下図は日本における発電のCO2排出量を比較したものである。

 

nuclear energy ph002

 

 再生可能エネルギーで水の電気分解で水素をつくり、水素を燃料とするゼロエミッション社会をつくる構想だが、2050年度にはインフラが整備され数10兆円規模の市場となると予測されている。水素技術は日本が特異な分野で特許件数は他国を圧倒している。この強みを生かすことが期待される。

 

 ICCP報告書への疑問点は多々あるものの、深刻さを煽ることで、結果的にはゼロエミッション社会の促進に寄与しているようだ。しかし世界の気候学者が協力して科学的に解析し信頼できる情報を開示して啓蒙に努めるべきであろう。それは地球温温暖化を売り物するロビイスト集団であってはならない。結局は一人一人が地球温暖化の正しい知識を身につけて判断し行動しなければならないだろう。

 

Hydrogen

 

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