出版社から訴えられるリサーチゲート〜著作権を揺るがすSNS

エルゼビアと米国化学会(ACS)は、リサーチゲートに対して、大量の著作権侵害を主張して訴訟を起こしている。この動きは、記事共有のコンテンツを変更する要求に対するリサーチゲート側の対応に不満を抱いた出版社が訴訟を起こすことになった。

 

リサーチゲート問題

リサーチゲートは、2008年に設立されたベルリンを拠点とする営利企業で、学術コミュニティを対象とした最大のソーシャルネットワーキングサイトの1つである。1,300万人以上のユーザーが、個人ページを利用して、公開された論文、本の章立て、研究会のプレゼンなど、さまざまな資料をアップロードして共有できると主張している。これに同調する科学財団や投資家は、企業に多額の資金を投入し、8,700万ドル(日本円にして96億円)以上を調達している。

(Chawla Science, online Oct., 6, 2017

近年、ジャーナル出版社は、リサーチゲートのユーザーが共有している著作権で保護された何百万もの論文(通常はサブスクリプションペイウォールの裏にあって契約された研究所職員か個人で購入するかしかアクセスできない)の著作権侵害が懸念されている。

 

そのため2017年、国際科学技術・医療・医療出版社協会は、140を超える出版社に代わってリサーチゲートに書簡を送り、論文共有方針に関する懸念を表明した。具体的にはリサーチゲートは、論文が著作権で保護されているかどうか、また法的に公的にまたは私的に共有できるかどうかをサイトのユーザーが判断するのに役立つ自動システムを実装することを提案した。

これに対して5出版社(ACS、Elsevier、Brill、Wiley、Wolters Kluwer)グループが、リサーチゲートが協会の提案を拒否したと発表した。代わりに同団体は、10月5日の声明で、リサーチゲートは、パブリッシャーが著作権侵害のコンテンツを削除するよう求める通知を送るべきだと提言した。

 

リサーチゲートが著作権で保護されている記事を無償で利用できるようにしているが、著作権侵害の規模を考えれば、何百万ものテイクダウン通知を送信することは長期的解決策ではないことも明らかである。このような通知でインターネットのトラフイックに悪影響を与える。また研究コミュニティが混乱することは避けなければならない。

その結果、ACSとElsevierが、リサーチゲートを法的強制力を持たせるように訴訟を決断した。ドイツの地方裁判所に提出されたこの訴訟は、そのようなコンテンツを掲載することの合法性に関する「明快さと判断」を求めている。法的には出版社の言い分は正当化されやすい。著作権保護に厳しいEUでは特にそうだ。

 

根底にある学術的価値の共有性

リサーチゲートの根底にある行動の問題は、著作権で保護された資料をウェブから削除して、研究者に記事を変更するよう促していることである。さらに出版社が金銭的損害賠償を受けるべきだと考えているが、リサーチゲートから固定金額を求めているわけではないとしていることも法的措置としては奇妙である。 (リサーチゲートはその後、相当数の著作物を削除したが、すべての違反が解決されたわけではないとされる)

しかし今後の裁判ではリサーチゲートは不利な立場にあるが賠償措置は欧州に限定され、米国では施行できないと専門家は見ているがそうなればインターネットの基盤である公平性に反する。

論文のコンテンツの権利は出版社にあることは、周知の事実であるが、これが厳密に成立していない場合がある。ロスアラモスのサーバーのようなリポジトリや最近ではリサーチゲートのようなSNSと一体化したプラットフォームである。

これらは速報性では圧倒的に優位であり、著者との直接的な情報交換の側面から見れば、広義にはソーシャル・メデイとして機能し、多くの研究者の研究に欠かせない存在となっている。前者は利益相反で審査が正当に行われず掲載不可になる不幸なケースの救済でもあり、後者は著者の自己アピールで就職先を探したり共同研究者を探すツールとなっている。日本にもKAKENというサイトがあるが、研究者への連絡先すらなく共同研究者を探すのも一苦労だが、リサーチゲートでは本人に直接メールを送ることが出来て便利さでは遠く及ばない。

 

格差をなくすのに貢献するリサーチゲート

結局、学術論文へのアクセスに格差があり研究目的で論文へのアクセスが研究に不可欠である研究者、特に開発途上国の研究者にとってはリサーチゲートは救いの神であり、ゆっくりとした速度でオープンアクセス化に向かいつつある中で出版社の権利保護のみを追求するのは無理がある。

論文の著作権の問題と出版社のように法的所有権を持つ第3社の存在意義がインターネットとSNSプラットフォームの急激な発展で、揺らいでいる。しかしこの問題は(芸術作品と同じように)論文の著者の著作権保護が最優先されるべきなのかもしれない。少なくともロスアラモスサーバーもリサーチゲートも恩恵を感じる人がほとんどだろう。少なくとも著作権の保護を名目に出版社の利益を保護することには無関心なのではないだろうか。

 

相手が悪代官でも罪は罪なのだから、ロビンフッドの行為に賛同出来なくても、大衆はむしろヒーローとして共感を持った。出版社は悪代官ではないにしても、本来は人類が公平に享受すべき価値を商品化することに違和感を感じる人も多いかもしれない。一方で社会的な影響力のあるSNSにも規制をかける動きが活発化している。普段考えないSNSの悪い側面が科学技術の分野に及ばないことを願いたいが、最終的にはユーザー個人が判断すべき問題なのだろう。

 

 

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