ONKALOは逆パンドラになりうるか

 ONKALOについて原子力に詳しい人なら誰でも知っているだろう。Youtubeなどでドキュメンタリー"The Place You Must Always Remember to Forget - Nuclear Waste the film"を観た人も多いのではないだろうか。フィンランドで世界に先駆けて進められている、高レベル放射性廃棄物最終処分場である。正確には最終保管場所と呼ぶべきなのかも知れない。現時点での最終処分はそもそも不可能なのだから。


 原子炉から排出される高レベル放射性廃棄物は年間20トンだが予定配備数が6基のフインランドは年間120tであるので、9000tのキャパシテイが満杯になる75年は原子炉寿命を越えている。一方我が国の原子炉台数は、50基なので1000トン/年となりたった9年分にしかならない。フインランドは原子炉稼働の当初から最終処分場の検討を行った。その際にあらゆる処理方法を検討した。例えば宇宙へ送り出す方式にはロケット発射のリスクがあり、海底保管も海流の変化などの可能性があり、何より大洋の汚染は人類の破滅につながるので避けたい。最終的には、北欧の地下は過去180万年間安定であったという実績から、最終的には地下深く保存するという方式が採用された。


 ONKALOが機能すれば、(フインランドに限っては、)パンドラの箱から解き放たれた高レベル放射性廃棄物を再び閉じ込めるという、逆パンドラが実現するかも知れない。プルトニウムの半減期は2.4万年だが注意したいのはたとえ半分になっても、人間にとっての影響はほぼそのままだということだ。一方で100万年スケールで安定に保存できれば、人体への影響が無視できるに10万年も視野に入る。

 ONKALOでは地下深くの花崗岩の中に何重にも囲われたカプセルで高レベル放射性廃棄物を収納する。地下トンネルは現在、掘削中であり2020年から操業開始の予定である。工事を受け持つ企業は高レベル放射性廃棄物から放射性微粒子が飛散しない多重バリア技術で、核廃棄物の最終処分を置き換えた。わが国を含む原子炉を稼働させているすべての国は、中間貯蔵までをやっているが、最終処分を明確にロードマップ化した国はない。そもそも最終処分はできないのだから不思議ではないが、フインランドの逆パンドラが成功するかは判断は出来ない。下にトンネルの模式図を示す。実際の掘削計画ははるかに複雑で膨大な労力と経費がかかる。

 

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 計画では使用済燃料棒は50年間冷却保存したあとONKALOに運ばれて10万年の眠りにつく。100-300年後くらいまでは、現状から未来社会を類推できるので閉鎖性に問題はないという。しかし核戦争が起こらなくても経済恐慌により政府が転覆するなどして国自体が確実である保証はないし、10万年後の人類は同じ言語を持つのかわからない。仮に知能が衰退することはないにしても閉鎖の意味をしらなければ、ピラミッドに侵入した人類のことだから、厳重なシールを破り閉じられていたパンドラの箱を開けようと試みるかも知れない。我々は敬意を持って過去の人たちの意志を理解しようとしただろうか。入ってはならないというメッセージを表す絵として有名なムンクの「叫び」が選ばれたそうであるが、10万年後の人類がどう解釈するかは誰にも保証できるものではない。第一、地球は6万年後に氷河期を向かえるので、一部の特権階級以外はほとんどが死滅する可能性が高い。

 廃棄物は右側の黒鉛鋼材ケースに収容された後に左の銅ケースに収納されてから、花崗岩に開けられた縦穴に入れられるが、金属に腐食はつきものであるので、モニタなど付帯設備にも経費がかかりそうだ。銅は水に耐性であるとはいっても酸性雨のようにpHが変わればそれも怪しくなる。全体が封じきられた後に腐食や地下など予期せぬ問題が生じた場合、どうするのか。侵入を拒み続けたONKALOを開けようとした人類がいれば幻滅とともに先祖の愚かさを思い知るだろう。迷惑千万なタイムカプセルだがその時点で人類が存在しているかが疑問である。

 

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 色々と考えてくると決してONKALOが唯一の逆パンドラとは言えないような気がしてくる。その意味では反原発、脱原発の人たちが主張するように、電気料金に廃棄処理費用を上乗せした時点で原子力発電のメリット 帳消しになるかも知れない。しかしパンドラの箱が開けられてしまった以上、人類は共同責任として手を尽くさなければならない。逆パンドラは我々の背負うべき十字架なのだ。その点で原発推進派も 反対派も関係ない、地球上の共通の問題である。これから10万年の間に、開けてはならない ONKALOを見つけ好奇心で開ける人類がいるとしたら、もっとましな処分方法を考えだすだろうか。

 

ONKALOについては下記に詳しい説明があります。

http://www.posiva.fi/en/final_disposal/onkalo#.U0NTwz-J0UQ

 

 

 

コメント   

# ナスカの地上絵 2014年04月10日 10:58
既知材料で探しても10万年スケールで安定な材質はないだろうか保存するより、リスクを伴っても近くにおかないことが好ましいのではないでしょうか。

それにフインランドだけ閉じ込められても、各国でできなければ意味がないじゃないですか。

恐ろしいのは後追いで同様の施設をつくってしまうこと。

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