ヒューマンエラー考察 —負の連鎖を断ち切れ

 科学者、技術者(理科系)が起こしたくないと常に思っている事。それがヒューマンエラーだ。掟のようなものである。丹誠込めて設計した装置は完璧でありたいと思っている。完璧なはずの装置が運転者の落ち度で台無しになることなど想像したくないのだ。実際に放射線管理会社の統計をみると、フイルムバッジ(線量計)のモニタの結果、研究者の被曝量は他の業種に比べて圧倒的に低い。業種の中には常時、放射線に接する医療機器のオペレーターなどある程度の被曝が避けられないものも確かに存在するのだが、研究者は何故被曝が少ないかというと、放射線を理解しているからであろう。


 工場のようにロボット化が進むと(ある制限を超えた突発的なファクターがない場合は)一定の基準で運転状態が制御され、そのフイードバック頻度は人間の神経伝達の速度と情報量を遥かにしのぐ。現代の複雑な機器、例えば旅客機では数時間のフライトにおいて離発着時の数分を人間が操作するだけで、残りはオートパイロットの作業なのだ。オートパイロットは工場のロボットと同じで、突発的な事象がなければあらかじめ設定されたパラメーターに従ってセンサーを入力として、フイードバックしながら決められたルートをたどる。様々な予期せぬ事象が起こることで制御範囲を超えるとオートパイロットは切断をうながしあるいは自分から手動に切り替え、そこからが熟練パイロットの出番となる。自動運転の基本は他の場合も同じで一定の範囲を超えると人間の出番だ。そこからは技量と経験がものをいう。

 自動運転を離れると人間と機械は入力に対する応答をみて次の行動にでる一種の対話をしている。あるとき機械の運転方法を教えたがどうもうまくいかないので操作をみていた。気がつくとその男はある操作をしてから応答をみて次の動作をするところを、応答時間を無視して次々と操作を繰り返していた。機械が応答するには時間がかかる。気の短い人はそれを待たずに次の操作を行うから安全な操作範囲を大きくはずれていくのだ。

 実際にそのようなヒューマンエラーが重大事故に結びついた例は少なくない。話題の科学技術、デジタル制御とヒューマンエラーを参照されたい。重大事故はひとつの事象がきっかけになるが全てがそれに帰することはない。いくつかの不幸な事象が続いて起こり、その過程で何度か立ち直る機会があるのだが、全てが繋がると予想もしない重大な事故が生じる。最新鋭のエアバス機は完璧な飛行を行う能力があったが、ピトー管に過冷却の水滴が氷の結晶をつくり速度センサーが使えなくなったことがきっかけであった。操縦士はその場合、エンジンの出力を一定に保ち失速を防ぐのであるが、センサー不良に気がつかない操縦士たちは機器を疑い、パニックに陥いってしまう。走行中に速度計がゼロになったからといってブレーキを踏むことは危険きわまりない。また土砂降りの日にすれ違う車の水はねで一瞬、視界が遮られても決してブレーキを踏んではならない。

我々は負の連鎖をどこかで断ち切る必要があるのだ。


 一番簡単にできることは自身の感度を良くする事と冷静になる事、このふたつであると思う。簡単にいうと例えば車では運転中に決して前方から目をそらしてはいけない、耳を澄ませば機械の異音に気がつく、ワイヤーがこげれば匂いがする。また冷静になれば異常を知らせる情報を頭で整理して経験と照らし合わせれば意味する結果を推察できるはずだ。推察できないのはデータが不足しているからだが、冷静であれば不足なデータが何でどうすればそれを補えるか推察できるのだ。


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