副作用を低減する放射線治療計画アルゴリズム

放射線治療における副作用とは被曝による生体効果に他ならない。ピンポイントの放射線治療や重粒子線照射など先進医療を除けば、一般の治療で使われる放射線照射では副作用(被曝)のリスクは決して低くない(無視できない)。治療を受ける患者の肉体的・精神的負担は大きいため、副作用を低減することが強く求められている。

 

癌治療のための放射線照射はオンコロジストが作成した放射線治療計画に沿って数週間、典型的には1カ月にかけて毎日照射が行われる。これは細胞の放射線損傷はドース量が同じなら分割照射の方が少ないという分割照射と呼ばれる原理に基づくもので、放射線治療計画ソフトでは照射効果をモデル化して複雑な数値計算を行い照射量を決めている。

分割照射では下図に示されるように、正常細胞は回復していくので損傷が少ないが成長が早くDNAのアンフォールデイング状態にある時間の長い腫瘍細胞は損傷が大きい。ただしこの差は統計的なものなので副作用すなわち被曝による放射線効果が全く無い訳では無い。

 

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Credit: breathe.ersjournals

 

ノースカロライナ州立大学の研究チームは放射線治療の副作用を最小限に抑えることができる放射線治療計画のための数学的なモデル(治療生物モデル)の高度化を行った(Gaddy et al., Physics in Medicine & Biology, 63, 2018)。論文タイトルの”Spatiotemporally fractionated radiotherapy”とは(照射)時間 と(照射対象)空間を最適化する、という意味である。

 

これまでの治療計画では正常細胞の回復時間を考慮して等量照射を連続して行うのが一般的である。例えば乳癌手術では術後に約40回の等量照射を行う。新開発のモデルではこの前提を見直して、照射ごとに線量を最適化するアルゴリズムを採用した。照射後の状態は照射箇所の違いや個体差があるので、照射量を変数とするのは理にかなっている。

 

適応治療で安心・安全な放射線治療

広義にはこのような照射条件を高度な情報処理で最適化する放射線治療を適応治療(Adaptive Radiation Therapy)と呼ぶ。適応治療ではCT画像などの情報を参照しながら複雑な情報処理を行う。現在、放射線照射機器メーカーが精力的に取り組んでいる。

検証実験では肝臓腫瘍の生きた試料に照射を行い等量照射と比較した。この結果、新アルゴリズムでは腫瘍への効果を損ねることなくドース量を13-35%減らすことによって副作用を20%低減することで効果が確認された。重粒子線治療が限定的な治療法であることに変わりはないので、放射線治療の高度化の必要性は高い。日本でも放射線治療計画の高度化や生物学効果を考慮した治療計画など放射線治療計画の高度化が活発化している。

 

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