Zn-DTPA〜超ウラン元素体内除去薬で救われた”Atomic Man”

ハンフォードの核施設はマンハッタン計画で長崎型原爆のプルトニウム製造に始まりプルトニウム製造拠点となった。現在は閉鎖されているが、放射能除染が行われたが地下水の核汚染で周辺住民に健康被害をもたらした。また施設内では危険なプルトニウム精製過程で何度か被曝事故も起きている。

 

ハンフォードの"Atomoc Man"

米国では"Atomoc Man"として知られるハロルド・マクラスキー氏は1976年8月30日にグローブボックスでプルトニウムとアメリシウムの分離作業中に爆発事故で体内にアメリシウム(硝酸アメリシウム)を吸い込んだ。被曝量は放射線作業従事者の年間許容量の500倍であった。日本の場合の許容上限は年間50mSv、25Svに相当する。

10Svが致死被曝量(David McCandless v1.35 Mar. 2010)なので、被爆当時は"Atomic Man"と呼ばれ、マクラスキー氏は数週間の余命と考えられた。マクラスキー氏は隔離され、超ウラン元素体内除去薬Zn-DTPAを600回にわたって投与された結果、1987年8月17日75歳で被爆前からの持病(心臓)が原因で死去するまで癌発生は見られなかった。

超ウラン元素体内除去薬Zn-DTPAは下記の構造の試薬で当時は実験段階であった。Zn-DTPAはどのような働きをしたのだろうか。

 

zndtpa-01

Credit: drugs.com

Zn-DTPA(Pentetate zinc trisodium)は微量金属除去薬で体内被曝者に注射して汚染物質を除去するために用いる。

 

Zn, Ca-DTPAによるキレート療法

・体内汚染後の24時間以内に、初期においてはZn-DTPAより効果が大きいCa-DTPAをまず投与する。

・Ca-DTPAが入手できない場合は、最初の治療としてZn-DTPAを使用する。

・翌日、さらなるキレート療法を継続する場合は、Zn-DTPAによる治療を開始する。

・Zn-DTPAが入手できない場合は、Ca-DTPAでキレート療法を継続し、亜鉛を含むサプリメント投与を行う。

 

なおDTPAはCa、Znの他にアメリシウム、プルトニウムと結合力が高いので超ウラン元素体内除去薬と分類される。

体内被曝のキレート療法としてはセシウム137に対するプラシアンブルー投与が知られている。ストロンチウム90は硫酸バリウムが有効であるとされている。原子力施設にはこうしたキレート療法の薬を常備しておく必要がある。

福島第一事故では住民へのヨウ素131の除去のためのヨウ素剤の配布が遅れた。もちろんこうした金属体内除去薬の投与には細かい投与手順があり、過剰摂取による副作用があるので、備蓄してあるだけでは十分な対策とは言えない。常日頃から使用法を周知徹底して初めていざという時に役立つことになる。

ハンフォードに学ぶべきことがあるとするならば、緊急時に必要な初期手当をきちんとすること、体内被ばくのリスクを低減する準備を整え、いざという時に実行する体制ではないだろうか。

 

 

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