核兵器と核爆発の知識〜知らないでは済まされない現実

北朝鮮のミサイル発射問題に呼応して国内でも核兵器や爆発に備える記事が目立つ。しかし唯一の原爆被害国でありながら、もしくはその結果としての核アレルギーのためか、一般には米国では常識とされる核兵器や核爆発に対する理解が低い。

 

本コラムでは緊急の状況を踏まえ、核兵器開発の歴史を簡単に紹介し核爆発について基本的な事項を簡単にまとめた。より詳細な解説はネットを探せば参照できるので、そちらを参考にされたい。不幸なことに非常に多くの人々の努力にもかかわらず、核兵器拡散が避けられなかったことになる。人類の核不拡散の長い道のりについては一連の記事がある。この機会にこちらも参考にしていただければ幸いである。

 

核爆弾の方式と核物質選択に二つの道

核兵器には二つの異なる道がある。方式はガンバレル型と爆縮型があり、それぞれに使われる核物質は高濃縮ウランとプルトニウムである。ガンバレル型(広島型)核爆弾は高濃縮ウラニウム(90%以上)を大量に(50-60kg)必要とする。大規模な濃縮工程が必要で作業は長期に渡るため大電力が必要となる。膨大な原料ウランの量が必要でその濃縮過程が非経済的である割には効率いが低い。核爆発に使われる正味のウランは一部で大部分が核反応に寄与しない。

ガンバレル型は早期爆発しにくいウランでしか効率が上がらない(実現できない)。ただし設計が簡単で実験する必要がない。広島型原爆は事前の実験なしに製造され使用された。また濃度も80%と現代の兵器純度からすれば不適な純度であった。

イクスプロージョン(爆縮)型は効率が高い核爆弾が製造できる。ウランに比べて少ない量の核物質ですむ(注1)。高い爆発効率を得るにはプルトニウムが必要となる(ウランでは不可)。

(注1)プルトニウムはウランに比べて核反応性が3倍高い。広島型原爆で使われたウランが60kgであるのに対して、長崎型で使われたプルトニウムは6kg。爆発力の差(10倍)は爆縮型とガンバレル型の効率の違いが大きく寄与している。

一方で爆縮型は均一な爆縮を起こすための爆縮レンズの設計が複雑で製造が困難である。設計に時間を要し実験によるフイードバックが不可欠となる。このため多数の核実験が行われて来た。

 

爆縮型の進化

長崎型では中心に核物質(プルトニウムコア)を置き、外側にはタンパート呼ばれる中性子反射板が囲む構造担っている。タンパーのもう一つの役割は重原子を用いることで、爆発による物質(中性子)密度低下を遅らせることである。

次の世代の原爆では中心を空にする(ホロウボウル)ことで、爆縮しやすくなり爆縮レンズとコア周囲の間にも空間を作ると空気が圧縮される間に爆縮先端が加速する時間が確保できるので、爆縮効率が向上する。

 

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Credit: britannica

次にコアにトリチウムを注入すると、核反応でトリチウム核融合反応がおこり中性子を大量に放出される。この核融合反応を追加した原爆をブースト型核兵器と呼ぶ。(熱核反応兵器、水素爆弾と区別される)。なおトリチウムの純度を一定にするためにメンテナンスを必要とする。

 

熱核反応爆弾(核融合爆弾)

近代的な核兵器はさらに進化した熱核反応爆弾(注2)で、トリガー部としてトリチウムをコア内に封入したウラン239のブースト核爆弾の横に、セカンダリー部を置く。セカンダリー部には中心部のウラン235の周囲を融合材料の重水素リチウムで覆い。その外側にはウラン238またはウラン235が取り囲む複雑な3重構造となる。核分裂—核融合複合型が現代の核兵器となっている。

(注2)水素爆弾とは熱核反応兵器の一つであり、核融合物質に二重水素(D)、三重水素(T)を用いるもの。一般には熱核反応爆弾と呼ぶべき。

 

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Credit: britannica

 

結局、核兵器を製造する方法は高濃縮ウランかプルトニウムを使うかのいずれかの道しかない。この二つの道を閉ざすことが核不拡散の道でもある。しかしウランは原子炉の燃料でもあり、プルトニウムは原子炉で生成される副産物である以上、これらを閉ざすことは原子力平和利用の道を閉ざすことにもつながる。つまり核兵器製造と原子力平和利用は表裏一体の関係にある。

 

核爆爆発が起きた時

核爆発直後には爆心に巨大な高温の火の玉が出現し、放射線(主にγ線と中性子線と熱線は瞬時に拡散して周囲に被害をもたらす。遅れて衝撃波が拡散して行くがこの衝撃波は地上にマッハステムを作って移動しながら建物を破壊して行く。後には巻き上げられた土が粉塵となり周囲に広がる一方、高温の空気は急激に膨張しながら上空に達し、キノコ雲となる。

 

周囲に及ぼす影響

下の表1に示すように影響は種類(熱線、爆風、放射線)と核爆弾の規模に依存する。

表1

影響          規模 1kトン      10kトン      100kトン

火の球の直径         80m       200m        500m

爆風(5-psi*)        500m      1,000m       2,000m

放射線の影響         1,100m     1,500m       1,800m

熱4-5 calories/cm2       600m      1,700m       4,700m

*5psiが生存率50%とされる。

大まかには爆発規模が大きくなっても放射線の影響を受ける空間は比例して大きくならない。つまり大型爆弾では広範囲を破壊できるが放射線による影響は増加させずにすむ。このため大型核兵器製造の競争が起きた。次に核爆弾を爆発させるには上空で行う場合と地上で行う場合がある。後者の場合には放射性物質が大量の粉塵と一緒に吹き上げられるため、放射性物質のフォールアウトが大きい。

 

地上で爆発した核爆弾の影響

米国はタンブラー・スナッパー作戦で1952年4月22日、ネヴァダ州の実験場で計8回の1-31kトン核爆発が行われ核爆発直後の地域に於ける兵士の作戦行動可能性を検証した。その中で兵士の健康被害を避けるマニュアルが作られた。注意する項目は1)爆発による熱線、2)衝撃、3)放射線の影響である。

影響の続く時間と範囲

1) 熱線

0.5秒以内

爆心地点から4.8km以内

2) 衝撃波

〜1.6kmを5秒で伝搬

被害は爆心地点から3.2km以内

3) (初期)放射線

影響は90秒以内

爆心地から1.6km以内

(α、β、)γ、中性子からの防御については鋼鉄1インチ〜25.4mmまたはコンクリート〜100mmもしくは〜130mmの土で遮蔽可能

 

放射線の影響以外は(表1に従えば)兵士達は安全圏にいたと思われるが、フォールアウトを無視した放射線の影響を1.6kmまで安全とした点は過小評価だったと思われる。記録映画によると不幸にも兵士達はガスマスクなしで爆心地点近くまで展開させられたことになる。放射線の影響は初期放射線の影響以外に核分裂生成物による残留放射線とフォールアウトによる効果がある。フォールアウトは風向きと地形によって影響を受ける地域が変化する。そのシミュレーションは可能だが機密事項にあたり公開されていない。

北朝鮮と米国の対立関係は冷戦後最大の核戦争リスクとなっている。終戦記念日を前にして釈然としない気持ちになるが、現実である。

 

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