トリチウム分離は本当に不可能なのか

トリチウム汚染水の貯蔵タンクが満杯になり海洋投棄が目前に迫っている。ALPSはトリチウム以外の放射性核種を除くことはできるが、トリチウムは覗くことができない。またどの様な手段でもトリチウムは除去できないとされている。一方、トリチウム(T)はデユーテリウム(D)と核融合反応の燃料に使われる立派な資源でもある。したがってもし分離が可能であれば、取り出して将来のエネルギー源に使えるはずである.

 

不可能ではないトリチウム分離

ではトリチウムの分離方法は本当にないのだろうか。原子力産業のロボット工学に関するシンポジウムをあいさするWM Symposiaの2000年2月に米国で行われた会議でSEPARATION OF TRITIUM FROM WASTEWATERというタイトルの発表があった。

以下、概略を紹介する。

Molecular Separations Inc. (MSI)社の除去システムを使った分離実験で以下の結果が得られた。

126μCi/l濃度のトリチウム汚染水が長さ2mのカラム(充填層)をタンデムに2組使用した実験室実験で26μCi/lに濃度が下がった。ハンフォード核施設の汚染水での試験では0.3μCi/lのトリチウムが0.07μCi/lに低下し、トリチウム汚染水処理の現場での有効性が実証された。

米国は飲料水中のトリチウム濃度を厳しく規制している。これはハンフォードの様な核施設の汚染水が施設の近くの住民の健康被害を防止するためである。カラムを増やすことで最終的には、安全基準(0.02μCi/l)を満たす飲用可能な水にまで濃度を下げることも可能だとしている。

 

論文はこれらの結果から移動層方式クロマト(注1)によるトリチウム分離が有効であるとしている。またカラム設置コストも十分、大規模運用の可能な範囲にある。

(注1)カラムを連続的に移動させる代わりに、一定の長さの カラムを移動させる方式のクロマト分離。小型の装置では擬似移動層方式が用いられる。

 

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Credit: D. Jeppson et al., SEPARATION OF TRITIUM FROM WASTEWATER, WM'00 Conference, February 27-March 2, 2000, Tucson, AZ

 

米国の核施設の汚染水浄化はマンハッタン計画以後、大量に生産されてきた兵器用プルトニウム生産の拠点となったハンフォードが閉鎖後も重要課題となっている。そのため米国にはクロマト利用のトリチウム分離技術研究のデータ蓄積も多い。

そういえばガンダーセンは凍土壁に対してフイルター壁を提案していた。もし移動層方式クロマトで分離可能なら海洋投棄でなく貴重な核融合燃料として分離・貯蔵することの方がメリットが大きいかもしれない。

 

 

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