ロスアラモス国立研究所は再生できるか〜管理運営委託の公開入札

米国の国立研究所の管理が大学や民間の研究所に管理委託(注1)されていることについては記事に書いた。例えばアルゴンヌ国立研究所はシカゴ大学、オークリッジ国立研究所はテネシー大学が管理している。職員はその場合、大学職員の肩書きを持ち、同等の福祉厚生を受けられる。

  

国立研究所を管理委託するという考え方

(注1)Government Owned Contractor Operated(GOCO)と呼ばれる。ロスアラモス国立研究所の年間予算は管理委託業務費として管理委託会社の管理下に置かれる。単年度の額は21-22億ドル。ロスアラモスの場合のLLCはLimited Liability Companyで、米国基準の会社組織で州法で税制の恩恵があるなど「特区的」な扱いなので、純粋な民間とは言えない。ただしGOCOは表記上は政府の管理団体と読めるが、実際にはバッテルのような場合もあり、実際には民間組織に拡大解釈されて運用されている。

ロスアラモス国立研究所はオークリッジ国立研究所とともにマンハッタン計画の拠点であった。原子爆弾を生み出し核兵器開発の代名詞であったロスアラモス研究所も管理委託業務の入札が行われることになった。

国家核安全保障局(注2)はオンラインで数10億ドル規模管理運営業務の委託業務契約の公募入札を発表した。なお現在の管理委託先は民間のロスアラモス国家安全LLC(Los Alamos Nationa Security LLC)であった。しかし2015年の研究所の業務に安全保障の問題が多いとして年間22億ドルの契約を失うことになった。日本の組織では外部評価委員会が否定的な評価を下すことがないが米国の場合には厳しい外部評価で組織の管理権の剥奪や、最悪の場合には廃止・統合も珍しくない。

(注2)National Nuclear Security Administration。エネルギー省に属する機関で核兵器の製造に際して核実験を含む研究開発、核兵器の安全性・信頼性の徹底と兵器の維持管理を主な目的とするが、国際的な核拡散防止も範囲に入る。

 

ずさんな核物質管理

管理委託の変更になった低評価はどの部門だったのだろうか。核兵器用のプルトニウムは定期的に置き換えるために、プルトニウム製造施設を再稼働してからの安全性に問題があったことが低評価の理由だが、ロスアラモス研究所の執行部はプルトニウム関連施設の業務に問題はなかったとしているが、プルトニウム・コア(デーモン・コア)製造に至る過程の安全性の保証が疑われた。環境基準が大幅に厳しくなり放射線モニタリングを自主的に行うNGOも増えて監視が厳しくなったこともある。

プルトニウム・コアの製造は研究所の権限が制限されているため、安全性の保証には政府が研究所の業務を外部委託で支援する必要がある。これまで業務を遂行する研究所に権限がないことが問題で、安全性の保障には責任と権限の両方を持たせる必要が認識されるようになった。一方、最近では核物質の輸送を巡って研究所の不祥事があり、またプルトニウム製造過程の核廃棄物の不適切な処理があった。最近では2014年の核廃棄物の環境汚染問題がある。なぜか日本では報道されなかったので暇を見て別記事にまとめたい。

 

再稼働の問題

プルトニウム製造施設が再稼働しても経験を積んだ職員は退職している。核を扱う専門家が不在になったために起きる様々な問題は、ちょうどウエスチングハウス社が製造から遠ざかっていたことで技術者が失われたことと酷似している。

管理委託契約が切れる2018年9月までに競争入札によって委託先が決まる。しかし原子炉同様に核兵器の製造が冷戦終結で最優先課題ではなくなってから久しい現在、民間に経験と知識を頼ることにも大きな不安がある。

プルトニウムコア製造業務は今の国立研究所組織には荷が重すぎるので、単純な業務委託で問題解決になるかは疑わしい。結局、技術の維持とは技術者の維持なのかもしれない。栄光の時代と呼べるのかは疑わしいが、ともかく原子力利用の一里塚を築いた研究所だった。その時代がすでに終わり新しい時代を迎えようとしている。

 

参考記事

デーモンコア以前にあったロスアラモス研究所の臨界事故

 

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.