内部被曝と測定法について

日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター(茨城県)の被曝事故で、当初、職員の一人が2万ベクレルを超えるプルトニウム239の体内被曝を受けたという報道の翌日の報道で、日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターは被曝した作業員5人の肺の放射性物質を再測定した結果、プルトニウムが検出されなかったと発表した。つまり2万ベクレルのPu239は体内に入っていなかったのである

 

目まぐるしく変わる被曝の報道

茨城・大洗町の研究施設で被曝した作業員5人が、放医研で内部被ばくを低減する治療などを受け、13日に退院していたが、日本原子力研究開発機構は放射線医学総合研究所に再入院したと発表した。退院後の検査で、尿からプルトニウムとアメニシウムが検出され、内部被ばくしていたことがわかったことから、2回目の治療を受けるため、18日、再入院したとしている。

時系列的には被爆の報道、放医研での検査でプルトニウム、アメリシウムの内部被曝が確実となり、入院、検査で内部被曝なしとわかり退院、退院後の検査(注1)でプルトニウム、アメリシウムが検出され、内部被曝の治療のため再入院となる。

(注1)内部被曝測定は体外計測とバイオアッッセイ法で行われる。体外計測はホールボデイカウンタ計測値をファントムで校正して行う。2万ベクレルという当初の計測値がファントム校正後の体内被曝値出会ったのかは説明されていない。また後日行われた尿検査はバイオアッッセイ法である。

これだけの事象が立て続けに起こることに対して疑問を持つ人は多いのではないだろうか。放射線計測技術が進歩した現代でも未だにこういうことが起こることに疑問を持つ人は多いのではないだろうか。また内部被曝と外部被曝が生物に対して同じ効果を持つのかどうかについても、気になるところであろう。

 

Pu239、Am241の起源

まず今回の対象がPu239であるが、原子炉中のウランからPu239ができる家庭を復習しておこう。原子炉中にはU238が燃料棒中に存在しているが、これが中性子捕獲でU239となる。U239がβ崩壊するとNp239になり、そのβ崩壊によってPu239が生成される。Pu239はU235、Th231、Pa231、Pb207と崩壊して最終的にはPb207になる。

超ウラン元素アメリシウム同位体(Am241)はPu239が2個の中性子を捕獲することで生成する。Pu239のα崩壊は〜5.16MeV、γ線は207.1MeV、Am241はそれぞれ5.49MeV、0.06MeV〜60keVなのでα崩壊のエネルギーはほぼ同程度であるがγ線エネルギーには両者で大きな差がある。

シンチレーション検出器のエネルギー分解能が低く、また生体の吸収の分だけ放射線が減衰するので、体内被爆そのものを計測していることにはならない。一方、バイオアッッセイ法の尿検査では6MeVα線で検出限界は1Bq/l(ICRP publication 78(1997))と極めて高い。

 

バックグラウンドと誤差

福島のホールボデイカウンタの検査では内部被曝の判定基準300Bq/lがしばしば問題にされるが、バイオアッセイ法の検査感度は(バックグラウンドの低い半導体検出器を使えば)、100倍以上高い。つまりホールボデイカウンタでの判定が尿検査と整合しなくても(数100Bq/l以下の線量ならば)おかしくない。

推察するに5名のうち4名は被爆事故直後に200Bq/lの計測結果だったというから(ファントム校正有無の事実も知らされていないことも問題だが)仮にこの値が最大線量ならば、吸い込みがあったとしても夜体内被爆はこの値よりはるかに低くなると考えて良いだろう。そうするとホールボデイカウンタの検出限界の話になる。それなら今回のバイオアッセイ法の計測結果が陽性でも驚く話ではない。

要するに体内被曝の評価は方法、誤差、感度に強く依存しており、闇雲に内部被曝の有無を結論すべきではない、ということになる。無責任な発表と数値だけが一人歩きする怖さが311から全く学んでいないようだ。ホールボデイカウンタでの300Bq/lの判定基準の是非については、ファントム校正による誤差の吟味を徹底する必要があるだろう。

 

今回の騒ぎで不思議なのは衣服に付着していたPu239の線量はどの程度だったか公表がない(あるいは報道されていない)ことである。2万ベクレルの大部分が衣服にあったのなら、体内被曝と結論する根拠が低い。どうしても2万ベクレルがホルボデイカウンタで検出されたとは思えない。もし仮にそうであれば被爆後直ちにして置かなければならないシャワー措置を受けていなかったことになるし、被爆した衣服をそのままでホールボデイカウンタを受けさせたのであれば、愚行としか言いようがない。厳しいようだが現場の放射線管理と教育を徹底する改革をしなければならない。

それにしても一般に研究所公式発表の際には通常はチェックが入るはずである。プレス発表が雑になったなという印象を持たざるを得ない。

 

 

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