海外で報道されるプルトニウム体内被曝のインパクト

日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター(茨城県)の被曝事故で、当初、職員の一人が2万ベクレルを超えるプルトニウム239の体内被曝を受けたという報道に(主任者ならずとも)疑問を持った人は多いはずだ。

 

体内被曝の可能性は最初から低かった 

というのも圧力で内部の核物質の粉塵が飛び散ったとしても、室内にいた作業員はフイルターつきのマスクをしていた。マスクの隙間から入り込んだ微粒子を肺に吸い込んだというもっともらしい説明と、肺にプルトニウムが達した、という説明は奇妙だった。というのも完全とはいえないまでも防毒マスクが機能しない、こと自体考えにくく、その後室内にいた3時間で吸い込んだとして、ほかの職員なみの200ベクレル程度なら理解できるとしても、マスクをつけてのこの値は多すぎる。

しかし時事通信を経由して世界中に誤認が事実として報道された。福島事故のときの事故隠しの汚名を払うために、事実をそのまま流したことが裏目にでたのだろうか。その中のひとつの報道では「かつてこの量のプルトニウムを吸い込んだ人間はいなかった」である。「ありえないほどずさんな環境で作業をしているという意味と同時に、あるいは被曝量の測定がおかしいのでは?」ともとれるタイトルである。

 

やはり体内被曝はなかった 

案の定、翌日の報道で日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターは被曝した作業員5人の肺の放射性物質を再測定した結果、プルトニウムが検出されなかったと発表した。つまり2万ベクレルのPu239は体内に入っていなかったのである。もうひとつ疑問に思ったのは肺が2万ベクレルの被曝なのに鼻腔が20ベクレルというギャップであった。

飛び散った高濃度プルトニウム粉体の一部が衣服に付着していたと推測される。線量が高いので核種の計測をしたらPuとAmが計測されたことで、吸い込んだ=肺まで達した、という推測だったとして最大の疑問は汚染事故の後、何故、衣服をそのままにして室内に待機させたのか、である。エリアモニターが異常な計測値を示すとその区画が閉鎖されて中に閉じ込められる規則なのだろう。

核汚染の対処の基本は来ている衣服を脱がせ、シャワーまたは放水で全身を洗い流すことのはずである。しかし携帯式以外に汚染水を貯めて外にださない専用シャワーがないのかもしれない。「閉じ込め」の原則は時として悲劇を生む。

 

管理方法に原理的な欠陥

いずれにしても現場の指示系統が混乱した結果、「ありえない体内被曝」と海外で報道され、福島事故で失墜した信用度が再びダメージを受けることとなった。信用を取り戻すのには時間がかかるだろうが、「体内被曝」の重さを認識してほしい。

補足すると放射性物質の容器の中にビニール袋をいれたのは明らかに業務上過失だ。放射線で高分子は劣化し破損するし、放射線照射効果でガスが発生することも予想できたからである。この処置を指示した責任者は業務上過失に問われても仕方ない。

 

 

You have no rights to post comments

Login

スポンサーサイト

最近のコメント

  • ホンダジェット成功の秘密
  • 「もつれた」3GeV光源の行方とそのリスク
  • 「もつれた」3GeV光源の行方とそのリスク
  • 「もつれた」3GeV光源の行方とそのリスク
  • 「もつれた」3GeV光源の行方とそのリスク
  • 高速増殖炉は何故うまくいかないのか
  • 放射光リングの持続性について〜加速器の経済学
  • 放射光リングの持続性について〜加速器の経済学
  • 癌完全治癒に向けてのオンコロジストのメッセージ
  • ヘリウム危機で早まるか高温超伝導の実用化

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.