書き換えられる燃料ウラン生成の起源

原子炉燃料のウランはプルトニウムと異なり、天然に地殻に存在する元素である。地中深くの砂岩に含まれるため掘削後、分離・精製が必要でその過程で廃棄されるCO2を考慮すると、必ずしも原子力はクリーンエネルギーとはいえないし、燃料精製過程での電力使用を考慮したら、発電コストも相当上乗せしなければならいほど、燃料ウランの掘削・製造過程は大変な仕事である。

 

 

Uロールフロントとは

ロールフロントとはシャッターの降りるキャビネットのことだが、原料ウランを含む砂岩は業界用語で「ロールフロント」と呼ばれる。このロールフロントはこれまで100万年ほどの時間をかけて硫黄と他の無機物の化学反応で「ゆっくりと」形成されたと考えられてきた。

コロラド州立大学生物地球化学研究グループは最近の研究(Nature Comm. 8 15538 (2017))で、この教科書的な記述は正しくないと結論している。ワイオミング州にあるウラン鉱床を調査した研究によれば、鉱床として存在するウランのフロントロールは、6価ウランの地球化学的な(非生物的な)比較的低温の還元反応で生成するとされていたが、そうではなく生物による生化学的な還元で4価ウラン鉱石が生成されたことがわかった。

ウランの結合状態を分析した結果、全体の58-89%のウランが炭素を含む有機機能グループあるいは炭酸塩と結合する4価ウランとして存在、6価ウランの存在比率は少ないことがわかった。

 

ncomms15538

Credit: Nature Comm.

 

原料ウランのロールフロントはU238が多く含まれており、生物的な4価/6価比と矛盾しない。また安定でない4価のウランが多く含まれていることは分離・生成過程を改良して効率を上げられる可能性があることを示唆している。さらにこれまでの鉱床以外にも、有機的(生物的)還元反応であることに着眼すれば新たなロールフロントをみつけられるかもしれない。

 

生物還元起源Uのインパクト

従来からの安全保障問題が福島第一事故で再燃し、工事遅れと建設コスト高騰で先進国では新規原発建設が進まない。しかし世界的にみればアジアと中東の発展途上国では旺盛な電力需要に原子炉の建設が緊急の課題となっていることも事実である。

ウランを分離しU238を抽出した後には膨大な量の非放射性ウラン化合物が残る。米国の採掘現場は採掘前に戻すことが義務付けられているが、どのような化学的状態で残渣ウランを戻すかも、最初の状態(生物還元)の知見が必要になる。また生物化学的還元によって生成されたウラン・ロールフロントは水溶性の状態に酸化されやすいことは、ウラン採掘周辺の水質汚染に関連する点で重要な知見となる。

よく知られていたウランの起源にも大きな誤解があった。もしかするとわかりきったこととされていることも、最新の研究(注1)で見直すと大きく書き換えなければならいことになるかもしれない。(確立したと思われている事象でも)疑ってかかる立場」が科学の進歩をもたらす心構えなのかもしれない。確立したと思われたとたんに予算がつかなくなることが怖い。

 

(注1)この研究には放射光が用いられている。放射光は最新の研究ツールとしてもはや欠かせない存在となったが、このコラムで何度も取り上げているように日本の放射光の次期計画が進展しない沈滞期にあり近未来が描けていない。特に全国共同利用施設の停滞は(役所の)想像以上に研究アウトプットへの影響の大きい問題である。

 

 

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