原子力事故を過小評価していた米原子力規制委員会

福島第一事故の際の保安委員会の不手際には眼に余るものがあった。東電と政府、保安委員会がそれぞれに指揮権を持つかのようなバラバラな行動はTV会議動画が出回って、国民が疑惑を持つことになった。保安委員会はその後、規制委員会となり米国の規制委員会(NRC)のような事故時の対応の一元化ができるようになった。しかし厳しい管理下にあるはずの米国の核施設は廃棄物汚染問題が浮上し、万全と思われていたNRCの原子炉事故について過小評価していたことが「ポスト福島の原子力安全性」という表題の最近の研究によって明らかになった(Science 356 6340 808 (2017))。

 

不適切なNRCの事故影響評価

NRCが原子炉火災などシビア事故の影響を過小評価した原因は事故解析の前提であった。注目したのは使用済み核燃料プールである。もし4号機プールの水が蒸発し冷却ができなくなっていたならば、福島第一事故の影響は数100倍大きかったとしている。

NRCは福島第一事故を受けて国内の約100基の原子炉の規制基準を見直した。そのひとつが原子炉管理会社が使用済み5年間冷却のため保管されてきた核燃料を早期に移動する措置である。核燃料プールに存在する核物質が発火して核汚染源の危険性があるからである。

NRCの解析によるとカスクの移動によって核汚染のリスクは99%まで減らせるとしていた。しかし(ここは本質的には日本と同じであることに注意)そうした発火などのシビア事故は確率的に起こり得ないから、保管を容認した。NRCの根拠となったのは原子炉から80km圏外のプルームによる核汚染が無視でき、仮に汚染されても1年以内に除染できるとした「仮定」だが、これらはチェルノブイリ、福島第一事故で成立しないことが明らかである。

 

明らかになった核燃料保存のリスク

今回の研究でこれらの仮定が正しくないことを科学的に証明した。その結果、事故原子炉周辺の100万人規模の住民は長期避難を余儀なくされ、NRCの評価より20倍大きい経済損失となる。さらに原子炉を管轄する電力会社の賠償には上限が設定され、残りは国民負担となる。

著者らは採算性が悪く補助金を出している原子炉のなかで核燃料プールからカスクを移動する企業(電力会社)にのみ、支援するようにすべきだと主張している。再稼働を控える日本にもこのルールは適用されてもよいのではないだろうか。もちろん中間保管施設の運用が不可欠だが少なくとも圧力容器外の核物質を保管するリスクはなくなる。

4号機の使用済み核燃料の潜在的リスクは当初から指摘されていた。運び出しは無事完了したが、規定以上のカスクが保管されていた事実も明らかになった。今後しかし長引く廃炉のなかで地震が起きることも想定し、4号機以外の原子炉から早期にカスクを移動することを考えるべきだろう。

 

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