Liイオンバッテリーの発火危険性〜リスクは回避されたのか

2013年1月7日に「ドリームライナー」ボーイング787JAL機のボストン空港での発火事故の事件は記憶に新しい。787機のバテリーは2箇所あり、発火事故があったのは、機体後方の補助動力装置(APU)用のバッテリー。セル製造元は日本のGSユアサ、電源制御システムをフランスのタレス社が担当した。

 

 

787のバッテリー事故の教訓

FAAが本格的に乗り出して事故調査は徹底的に行われたが、セルの一つの短絡が他のセルに伝搬して、バッテリーが熱暴走した、とした結論では短絡原因は不明のままで、結局うやむやのままバッテリーに出火を抑えるため、セル間の熱拡散防止とバッテリー排気を機外にするなどの対応で、安全性が担保できるとされて運行が再開されている。だが根本的な問題がLiイオンバッテリーにあるとしたら対処療法にすぎない。いつまた発火事故が起きるとも限らないのである。

 

航空機バッテリーの最大負荷は瞬間電流が1,000Aにもなるエンジン始動時のスターターを始動させる時であった。現在ではターボ(ジェット・ファン)エンジンには発電機が付属しているため、バッッテリー負荷が軽減されている。つまりエンジンの回転が一定の速度に達するまでのアシストだけである。ただし発電機が故障した時を想定して、1時間の緊急電源としての余裕を持つことが規定されている。

787以前の航空機では12セル24Vのバッテリーで18-34Ah容量のものが使われることが多かった。787は機体前方の主電源とAPUの2箇所にLiイオンバッテリーを備える。主電源はエンジンスタート前の機体各部の電力を供給する他、機体に給油する際の動力源にも使われる。エンジンスタート後は発電システムから電力が供給される。また主電源は飛行中にエンジンが停止した際の緊急電源として使用される。電気回路が多い787では文字通り航空機の運用を支えているのが主電源なのである。

APUバッテリーはAPU(小型タービン)を起動するために使われるだけでなくバックアップ電源となる。航空機の安全な運行にはLiイオンバッテリーにかかっていると言えるが、Liイオンバッテリーの危険性が本質的に解決されたわけではない。リチウムイオンバッテリーの正極にはコバルト酸化物が、また陰極には黒鉛が使われているが、後者は空気中でよく燃える。そのためリチウムが発火剤、黒鉛が燃料となり、事故が起きると危険な火災につながることは頭に置くべきだがサムソンの場合は何が問題であったのだろうか。

 

携帯端末の相次ぐ発火

サムソンの事故原因の調査では発火事故はふたつの異なる不良によるものとしている。Liイオンバッテリーで最大の難題は正極と陰極の間のセパレータ(電解質)を薄くかつ破れないようにすることである。サムスンは2016年9月に250万台のGalaxy Note7を回収した際に、事故原因を関連会社から納品されたバッテリー不良としていた。しかしバッテリー供給先を変更しても発火事故が続いたことから、本体の設計不良が疑われるようになった。

 

炭素電極と決別できるか〜シリコンが救世主になるか

カリフォルニア大学リバーサイド分校の研究グループはナノ繊維でできたスポンジ状シリコンを用いることで炭素電極から決別できることになるかもしれない。(Scientific Reports 8246, 2015)。これによってLiイオンバッテリーの発火リスクを大幅に下げられる見通しがついた。

従来技術の炭素系電極はほとんどがグラファイトを用いる。シリコン電極を用いるには表面積を大きくするナノ構造を用いる。その「ナノ構造とは繊維できたスポンジで、製造方法がユニークだ。高電圧を印可したノズルからシリコン化合物溶液を回転したドラムに吹き付けてシリコン酸化物のナノ繊維をつくる。

 

次にマグネシウム蒸気による還元でシリコンナノ繊維とする。この2ステッププロセスで、直径10nmのスポンジ状のシリコンナノ繊維スポンジができる。このスポンジ・シリコン型Liイオンバッテリー性能は、600回の充放電後の蓄電容量が802mAh/g、99.9%のクーロン効率と、500回が目安の従来型の性能をはるかに上回る。

シリコンでグラファイトを置き換えることでエネルギー容量が高くグラファイトと決別できればLiイオンバッテリーが格段に安全なものとなる。携帯端末やEVだけでなく再生可能エネルギーの貯蔵でベース電源化が期待される。

 

 

 

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