海水中のウランを回収する技術に新展開

IAEAは今後15年で原子力発電は68%増大すると予測している。この予測こそ東芝(ウエスチングハウス)が原子力部門に成長性を見出した根拠でもある。現時点で世界で稼働している原子炉は30カ国が保有する450基で、使用されるウランは毎年60,000トンにもなる。

  

海水から核燃料を調達

原子炉の運用面で最大のネックとなるのは核燃料(ウラン)の供給と廃棄物処理(核燃料サイクル)である。後者は未だに未解決のままであるが、前者は海水中のウランの回収が可能になれば大きく前進する。海水中に含まれるウランを回収して再利用することは果たして可能なのだろうか。

スタンフォード大学の研究グループは海水中に溶け込んでいるウラ(U235)ンの効率的な回収方法を開発した。地殻に高濃度に存在する場所(ウラン採掘場)に依存する理由は採算性に他ならない。しかし元素として見れば(意外にも)ウランは錫と同じくらい岩石に含まれる「ありふれた存在」なのである。

ウラン資源に恵まれたオーストラリア、カザフスタン、カナダ、ロシア以外の国が原子炉を運用するにはこれらの国々から輸入するしかない。もし海水中から核燃料を抽出できるようになればウラン資源の枯渇や燃料の調達に困ることはなくなる。(核廃棄物の増加に結びつくことにもなることを頭に置くべきだが、少なくとも行き過ぎた採掘による環境悪化はなくなる。)

海水中に溶け込んでいるウランは45億トンなので回収の採算性が確立すれば充分な燃料の調達が可能になるし、採掘より環境保全の点で優れている。なお海水の総量は13.7億立方kmで、その中にウランは正イオンとして存在し酸素と反応してウラニル(酸化物)を形成する。このためウランを抽出するにはウラニルを取り出すのが実用的である。ちなみに海水中のウランは埋蔵量の1,000倍と考えられている。

 

ウラニルのトラップ

ウラニルをトラップするにはアミドキシム基を用いることができる。繊維をアミドキシ基でコーテイングし海水を流すとウラニルが抽出できるのでJAEAなど世界各国の原子力研究機関で研究されている。この方法の問題は採算性の壁である。下の写真はDOEのオークリッジ国立研究所が開発した高効率吸着繊維のX線マイクロトモグラフイ(とパシフイックノースウエスタン国立研究所がAPSで測定したもの)。

 

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Credit: Pacific Northwestern National Laboratory, DOE

 

そこでスタンフォード大学の研究グループは、炭素繊維電極にアミドキシム基をコーテイングし、電気パルスを送ることによってウラニル捕獲量が増大し、結果的に捕獲速度と再利用性を向上させることに成功した(Nature Energy 13 148, March 03, 2017。

 

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Credit: Nature Energy

 

効率向上への第一歩

海水による実証試験で新型繊維電極でウラニル捕獲量は3倍、飽和時間が9倍以上に増大した。もちろん採算性の壁を越えるためには性能をさらに上げなければならないが、海水からのウラン燃料抽出は海洋国にとっては無尽蔵のウラン資源に他ならない。地味だが研究を継続する価値はあるかもしれない。しかしこの手の研究加速は廃棄物の総量を規制するのでなく、加速させることでもある。

放射性廃棄物の海洋投棄は禁止されたが、禁止以前に投棄された廃棄物は海底に沈んだままである。福島汚染水の垂れ流しも時間とともに局所的な高濃度汚染水が希釈されて行く点では同類だ。結果的に核廃棄物の海洋投棄と同じなのである。大洋汚染が地球環境悪化につながることは間違いない。海水からウランを抽出する技術に先駆けて廃棄物処理の問題を解決する技術の開発が先決ではないだろうか。

 

 

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