放射性雲について

成層圏を飛行するジェット旅客機や低高度地球周回軌道を飛行する宇宙飛行士の放射線被曝は地上の人間より高い。それでも地球磁気圏の防御で高エネルギー粒子やγ線バーストから守られている。

  

放射性雲とは

しかし旅客機の運航ルートに火山の粉塵があれば迂回するように、放射性雲を避ける必要があるかもしれない。これまで高空での放射線被曝は宇宙線と太陽フレアによるものと考えられてきた。例えばロンドンと東京間の飛行による被曝は胸部X線撮影と同程度とされる。

しかし最近、放射線量が通常の倍となる放射性雲存在することがNASAのARMASプロジェクトでわかってきた(Space Weather 18 Nov. 2016)。ARMASとはAutomated Radiation Measurements for Aerospace Safetyの略である。

265回の飛行調査の中で、「放射性雲」の中を飛行した6回の飛行で通常値の最大2倍となる放射線量の増大が観測された。また過去のデータにそれを超える実測値もあるが公表されていない。しかし飛行ルートの一部(放射性雲)にしか放射線量の急激な増加は見られないので、宇宙線や太陽フレアの直接的な影響では説明がつかない。

 

armas data strip

Credit: ARMAS

 

放射性雲の形成メカニズム

異常な放射線量の増加は地球磁気嵐と相関があることがわかっている。このため太陽フレアの荷電粒子がヴァンアレン帯に捕獲され、その一部が地球磁気嵐の影響でヴァンアレン帯から抜け出して高エネルギー電子流が大気圏に流れ込んだ可能性が高い。

高エネルギー電子は大気圏上層部の窒素原子や酸素原子と衝突して2次、3次のγ線を放出する。ヴァンアレン帯という放射線の砦も時には地球磁場の影響を受けて綻びが生じる。1回の胸部X線撮影の放射線被曝は1.5mGyで癌発生リスクは20万分の1となる。しかし繰り返し被曝リスクは放射性雲中の長時間飛行の繰り返しではこの限りではない。パイロットが定期的に放射性雲中飛行すれば年間で100倍以上の被曝となり、長期勤務ではGy単位の積算線量に到達する可能性もある。

将来的には放射性雲の予報マップが公開されるようになれば旅客機の飛行ルートを変更して雲への突入を回避することになるかもしれない。パイロットもCAも線量計を持つべきなのであろう。

 

放射性雲の線量は今の所は人体への影響を懸念する必要はなさそうだが、ヴァンアレン帯のちょっとした変化で、成層圏の放射線量が左右されることが明確になった。筆者も線量計を飛行機にも持ち込もうと思っている。なお出かける前に宇宙天気予報(リンク先参照)で太陽フレアの活動状況をチェックしたい。

 

追記:

京大の梅野健教授らの研究グループは、2016年4月の熊本地震発生前後でGPSを使い、大気よりも上の上空約300キロにある電離圏を分析し、地震が発生する1時間ほど前から、熊本付近の電離圏で電子の数に異変が起きていることを見出した。同様の結果は2011年の東日本大震災でも観測されていた。地磁気の異常(磁気嵐)がプレートの動きで起こるとすれば放射性雲のように、電離層を局所的に変化させる可能性がある。

 

放射性雲マップのリアルタイム観測で大規模地震の予知ネットができるかもしれない。

 

 

 

 

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