福島2号機放射線量に関するワシントンポストと東電発表の温度差

ワシントンポストといえば先の米国大統領選挙で反トランプを鮮明に打ち出しクリントン候補の圧勝を連日伝えた公正さに欠ける報道で信用を落としたが、今度は福島第一2号機の高放射線量について報道が波紋を呼んでいる。後に同紙は報道に偏りがあったことを認めたが、今回の報道はどうなのだろうか。

書き方によっては福島の深刻な状況は東電の発表とかけ離れたイメージを作り出し、それがメデイアに拡散し波紋を広げるので影響力が大きい。以下に深刻さを伝える大手メデイアの報道の一部をあげる。

ガーデイアン紙

毎日新聞(英字)

Japan Today

 

これらが他のメデイアに広がって格納容器内の放射線量と1日あたり300トンの汚染水を海洋投棄していることと一緒になって尾ひれがついて、誤解した報道が多くなっている。例えば下の例では悪質な中傷と取れる表現で危機感を煽る。外国のメデイアに付け込まれないためには、国として情報発信を管理する必要がありそうだ。

FOX NEWS Science

Radiationscience.com

 

発端となった東電発表

まず東電の発表をまとめておくと、2017年2月9日に福島第一原発2号機原子炉格納容器内で、圧力容器に至る作業用トンネル内で650Sv/hの放射線量が検出されたと発表した。東電は先週の時点で530Sv/hの線量を計測したと発表している。

溶融した核燃料(デブリ)の線量が高いことは納得できるが、問題はその場所が圧力容器中心でなく、圧力容器の外側であった点である。また圧力容器中心に近い場所では(予想に反して)線量が低いことから、想定されていた圧力容器底にデブリが塊になっているイメージが崩れた。また公開された画像をつなぎ合わせると、圧力容器底の作業用金属メッシュに1m四方の穴が空いていることも明らかになった。

 

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Credit: EXTREMETECH

ここで時系列を簡単に整理しておくと、①ミューオン透視実験で圧力容器内にデブリがほとんどないことがわかった。②東電は容器の底を突き破って落下したデブリが格納容器の底にあるとした。③ミューオン実験で格納容器の底のデブリを観察できない(注1)。④TVカメラで観察を試みた。④の圧力容器内へのTVロボット導入過程でペデスタル(圧力容器外側)に高放射線量が観測された。ここでロボット設計(仕様)はデブリが格納容器の底部にとどまっていること想定している。ただし海外の一部報道の「最悪のシナリオ」は、デブリが格納容器の底を突き破って地下水に接するために地下水の汚染が止まらない、というものである。

シミュレーションではデブリの広範囲な飛散はないとされるが、今回、圧力容器から離れた外部に高放射線量が観察されたことは、東電が想定する単純な落下では説明が難しい。今回の結果を踏まえて想定枠を広げ(仕様を強化して)ロボットを製作し直せば良い。2017年度中に廃炉手順を決定するロードマップにとらわれる必要はないのではないか。

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 Source: The Asahi Shimbun

 

(注1)1号機の圧力容器中には(大部分が底を突き破って落下したため)デブリはほとんど存在しない(ミューオン透過法を適用)。2号機の圧力容器中にはデブリが残存すると考えられたためデブリの散乱能を考慮してミューオン散乱法が適用された。

 

2号機のミューオン散乱法による透視画像(以下)の圧力容器底部にある黒い影を東電はデブリと解釈した。しかし別グループ(Simply Info)が画像処理を独立に行い容器内にデブリがないとしており、決着はついていない。仮にデブリが圧力容器注に閉じ込められていたら容器外の高放射線量を説明できない。

 

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東電は圧力容器の外側の高放射線量の原因を原子炉圧力容器から溶け落ちたデブリが関係していると説明しているが、「落下した」という表現は「圧力容器外側で高放射線量が計測された事実」と整合しない。圧力容器外で高放射線量が計測された=デブリが飛散して圧力容器の外に存在していることを意味する。

東電はまた高放射線量ではロボットが2時間しか運用できないことを認めたが、1号機、3号機の格納容器内部調査にも影響が及ぶこと、廃炉の最初のステップである調査ロボット体制に見直しが必要になることには触れていない。

 

NPOのセーフガードも深刻さを伝える大手メデイアに敏感に反応し、周辺とお広範囲な東北・関東で放射線量が減少傾向にあることを再度確認している。

しかしワシントンポスト紙は高放射線量でロボットが運用できない問題を深刻に受け止めている。大量のデブリに近づくと今回の計測値より高放射線量が予想され放射線損傷でロボットの運用に支障をきたすため廃炉ロードマップに変更を余儀なくされるからである。少なくとも2021年度から予定されているデブリ取り出しスケジュールは遅れることが避けられない。また原子炉格納容器の冠水方式でのデブリ取り出しは根本的な見直しを迫られることになる。

楽観的なデブリ取り出しに意味がないことが明らかになった以上、2017年度にデブリ取り出し方式を決定するとした大前提を外すことが必要である。まず耐放射線ロボット技術開発に取り組み、調査と作業をこなせるヘビーデューテイロボットを開発することを優先して行うべきだろう。廃炉はこれから世界の原子炉が抱える共通課題でデブリ取り出しは(表現は悪いが)成長産業である。想定内で予算に合わせて仕様を作っても無意味であることがわかった。廃炉技術が輸出産業になることも視野に入れて、「使い物になる」耐放射線ロボットを開発する必要がある。

財団から予算を配る旧来の方法論は時代遅れだし、廃炉事業には向かないであろう。海外も含めてクラウド・ソーシングも必要だ。今回の結果がきっかけに本格的な廃炉事業が活性化することを願いたいし、大手メデイアはバイアスのない報道を徹底してほしいし悪戯に危機感を煽ることをやめてほしい。

 

 

 

 

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