2号機原子炉格納容器内部調査における高放射線量について

2号機の内部では1月30日、溶け落ちた核燃料の可能性がある黒い塊が撮影された。原子炉圧力容器の外側でも運転中の原子炉圧力容器内と同程度の放射線量にあたる毎時530Svという高い放射線量相当と報じられている。しかしその計測値は線量計で計測されたものではない。

 

2号機原子炉格納容器内部調査の調査結果はIRIDが公開している。格納容器内部へのパイプは細く長く設計時にメンテナンス性は考慮されていない。通常は真空チェンバーなどの格納容器設計ではポートから内部のアクセスができるように設計するのが普通であるが今回のような状況があり得るとは考えていなかったのだろう。今回の調査範囲は下図の赤い枠で囲まれた部分で、本丸の制御棒駆動機構の中心部には到達していない。

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Source: IRID

 

監視カメラの画像処理結果は東電が公開している。それによると圧力容器の下部にある格子(グレーチング)は損壊して、穴が空いていることがわかったが、このことでグレーチング上を走行するロボットが使えない。想定していたよりもデブリ落下による圧力容器の損傷が大きい。下が画像を組み合わせた全体像で大きい穴が空いていることが確認できる。デブリが下に落下しているものと考えられる。ミューオン透視実験とシミュレーションでデブリが落下していることが確実となった時点でグレーチングを足場にして自由に走行できる可能性は閉ざされたはずである。

楽観的なのかミューオン実験もシミュレーションも信用していなかったのかどうもスッキリしないものがある。

 

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Source: TEPCO

 

空間線量が高いと例えばチェルノブイリの事故後のフイルムなどには感光した白い斑点が画像に出現してキラキラ輝く。CCTVで録画された動画にも同様のチラツキが入るので、その密度から放射線量を推定したというが、個人線量計も同じ計測原理である。放射線従事者は何らかの積算線量計を身につけて放射線管理区域で作業する。現在では熱ルミネッセンス(TLBバッジ)量計や蛍光ガラス線量計(ガラスバッジ)、半導体検出器など多くの線量計が使われる。

原子炉圧力容器に導入されたロボットの放射線量も気になるが、経路の場所ごとの放射線量の計測にはリアルタイム線量測定が欲しい。高い放射線量環境では電子回路式の線量計をロボットの先端に取り付けるわけにもいかなかったのだろうが、線量計は監視カメラと一緒に携行すべきである。

発表では、毎時530Svという計測値が信頼できるならば、デブリが近くにあるということになるが、導入経路の途中で計測された理由が気になる。デブリ飛散の可能性があるからである。

詳しい画像処理後の監視カメラのデータは東電サイトを参照して欲しい。

なお東京電力福島第一原子力発電所1号機で原子炉格納容器内を調査するための「ワカサギ釣り」式新型ロボット(「日立GEニュークリア・エナジー」(茨城県日立市)とIRIDが3日、報道陣に公開)には吊り下げた監視カメラに線量計が付属している。

 

530Sv/hという高放射線量だが以下の圧力容器壁から1m地点の空間線量〜73Sv/hから予測されるデブリ近傍の放射線量は推進が60cmと浅いため、東電シミュレーションで最大1000Sv/hとされていることから考えれば、デブリ近傍の計測値とすれば理解できる。

 

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Credit: TEPCO

 

設計に勝手な「想定」は危険

廃炉ロボットは特定のミッションに特化されているが、いずれも予想外のトラブルに悩まされ、思うように格納容器の内部調査が進んでいない。ロボット設計時の想定に甘さがあったのなら、過酷な環境下での調査を余裕を持って行えるロボットを開発・導入する必要がありそうだ。この手のロボットはオーバースペックでも宇宙空間や災害時にも役に立つので無駄にはならないはずである。

日本の廃炉ロボットの多くは小型で自走式であるが、ドイツの産業ロボットメーカーのKUKA社は国内でこれから始まる廃炉ラッシュに向けて、お得意の精密作業ロボットを廃炉作業に使えるように改造して本格的に廃炉事業に取り組む。産業用ロボットは日本だけのお家芸ではない。KUKA社のシステムは世界中の工場で組み立て作業中心に活躍している。KUKA社に寄れば放射線量の極端に高い極限環境で頼りになるのはハイドロすなわち油圧であるとしている。もちろん大型油圧ロボットを格納容器内に導入することは困難であるが、障害物や足場の悪さに負けない余裕のある廃炉ロボットの出番が待たれる。

 

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Credit: KUKA

 

追記

2月4日、東電は計測値の謎(燃料デブリに近い場所で推計された値の方が低い)を巡って、再調査を決めた。今度こそ線量計をrオボットに取り付けて、計測精度をあげるべきだ。

なお高放射線量がデブリのあるとみられる中心部でなく格納容器内で起きたのかの原因は下記の2つのいずれかと考えたい。

まずデブリが所定の場所にない可能性。低いが飛散した可能性は否定できない。その場合は格納容器内に局所的にホットスポットが生じており、廃炉調査の見直しが必要になる。一歩間違えば悲惨な状況になっていたシナリオである。

ノイズにより画像にチラつきが生じた可能性。金属管と接触してノイズを生じた可能性もある。ただしその場合は往復で再現性があるかどうかである程度検証できるだろう。上の写真にある足場の穴は1m四方である。自律走行が困難なら自走式を見直して浮上式を検討する必要も生じている。また3Dカメラを装着してオペレーションも楽にしたいところである。

 

東電の発表したミューオン透視の画像(下左)では圧力容器底にデブリがあるとされるが、別グループ(Simply Info)による画像処理(下右)によればデブリは圧力容器底にないという。後者が正しければ圧力容器の外での高放射線量はデブリが閉じ込められていないことと矛盾しない。ミューオン透視実験の測定範囲を下に向けて再測定して見るのが良いと思われる。調査ロボットと並行してミューオン透視実験を再度行う必要があるのではないだろうか。

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