黒鉛型原子炉の核廃棄物の再利用〜半永久バッテリーに転用

かつて商業原子炉の選定にあたって英国型原子炉を導入する予定であった。原子力利用(軍事・商用)において英国はマンハッタン計画に参加した主要な核物理研究者の一人であるウイリアム・ペニーが、英国に独自の技術を開発する原動力となった。

  

商業原子炉には米国の2社(GE社、ウエスチングハウス社)はそれぞれ沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR))を開発した。英国型原子炉すなわちコールダーホール原子炉はこれらと異なり、シカゴ大に建設された世界最初の原子炉の流れを組む黒鉛を減速材としたものであった。

コールダーホール原子炉はセラフイールドに1956年に建設されたが、この原子炉は電気出力を取り出すことよりも、原爆材料のプルトニウム生産に都合の良い原子炉であった。コールダーホール型原子炉(マグノックス炉)は、軽水炉に比べて、熱出力密度が小さい為に、原子炉が出力の割に構造が大型になる欠点があった(注1)。

(注1)英国の原子炉開発はチェルノブイリ事故後急速に減速し現在は日立—GEニュークリアー・エナジーが設計した改良型沸騰水型軽水炉の包括設計審査が第2段階に進展したほか、フランス電力下のアレバ社が建設する欧州型加圧水炉や、中国製の原子炉を導入するなど輸入に頼っている。

それでも日本初の原発として東海発電所に採用され、商業発電の原子炉として採用されるはずだったが耐震性の脆弱性のために日本には向かないとして土壇場で軽水炉が採用された。

チェルノブイリの原子炉もソ連が独自に設計した黒鉛減速沸騰軽水圧力菅型原子炉で一般的な軽水炉と構造が異なるが、減速剤として黒鉛が使われる点はマグノックス炉と共通している。下の写真が黒鉛ブロック。

 

Graphite Bars

Source: atomicheritage

 

マグノックス炉や黒鉛減速沸騰軽水圧力菅型原子炉では使用済み核燃料と共に原子炉の閉鎖後に大量の高レベル放射性黒鉛が廃棄物となる。英国には閉鎖された黒鉛型原子炉から廃棄された放射性黒鉛が95,000トン存在する。核反応によって黒鉛ブロックの表層では炭素はベータ崩壊半減期が5730年の放射性同位体(C14)として存在する。

C14の崩壊過程はベータ崩壊で

14C -> 14N + e +ν

半減期は5730年である。

 

Nuclide-C-14decay10

Source: University of Toronto

 

英国ブリストル大学のキャボット研究所の研究グループは高レベル放射性廃棄物から半永久バッテリーを製造する技術を発表した。黒鉛型原子炉の使用済み核燃料棒のC14(半減期5730年)から、半永久的な寿命を持つダイアモンド・バッテリーが製造できるとしている。

行き場のない放射性廃棄物から安全で半永久的寿命をもつバッテリーはどのように製造できるのだろうか。ポイントは人工ダイアモンドとC14がベータ崩壊するということである。

使用済みの黒鉛ブロックを高温に加熱すると炭素は蒸発し気体となる。この蒸気を気相成長の原料に利用する。マイクロ波プラズマでラジカルを作り人工ダイアモンドを作る。その後、表面を放射性でない通常の炭素ダイアモンドで被覆する。ベータ崩壊なので電子が吸収される薄膜で表面からの放射線が計測されない安全なダイアモンド層が得られる。

 

ダイアモンドに電極をつけ一方を接地すれば半永久的に使えるダイアモンド・バッテリーが得られることになる。

夢のような放射性廃棄物の再利用であるが、災害用非常電源、半永久的バッテリーの用途は原子炉内の放射線モニター、宇宙利用、(ペースメーカーなど)生体内に埋め込まれたデバイスの電源など多岐にわたる。

黒鉛型原子炉というと時代遅れの感があるが放射性廃棄物の有効利用ができるという点は興味深い。むやみにモノを捨てない哲学を持つ国ならではの試みなのかもしれない。高レベル放射性廃棄物の熱出力を一時保管中だけでも有効に利用することはでいないのだろうか。

 

 

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