ソーラーグライダーの競争激化

 トヨタを筆頭とする大企業はコアビジネスの販売利益が好調でも、企業内に調査や企画のセクションを置いて、将来性のある新規ビジネスへの参入を目指す。かつて世界の空を独占して大量輸送に貢献したBoeing社は旅客機ビジネスで利益率の大きい大型機セグメント(乗客100人以上)で、欧州企業連合のエアバス社と熾烈な競争状態にあることは記事にかいた。写真はNASAのHelios。高空(30km)で火星大気圏の疑似環境での飛行を研究するPathfinderの前身機で、ソーラーパネルと燃料電池をエネルギー源としている。

 

 

Helios in flight2 copy

 

 Boeingとエアバスの競争は亜音速の世界と全く関連がなさそうな分野、high altitude, long endurance (HALE)あるいはHigh Altitude Pseudo-Satellite (HAPS)と呼ぶ、ソーラーセルや水素をエネルギー源とする長距離モーターグライダーの世界にも及んでいる。有人での長距離飛行はすでに1986年にプロペラ推進のVoagerによって、9日かけての世界一周飛行記録がある。ここでは無人長距離飛行機の現状についてかくことにする。Qinetiq社は Zephyr 7と呼ばれる超軽量(53kg)のソーラーパワー無人機を開発し、2週間の長時間無人飛行記録を達成した。

 

 エアバス社はQinetiq社を買収し、Zephyr 7でソーラーパワーに不利な冬の天候で連続11日飛行に成功した。同社は改良型のZephyr 8で連続飛行1年間に挑む予定である。こうした背景には連続監視や通信機能を20kmの高空に数週間単位で配置するという、軍事、民事の新ビジネスの可能性に期待するからである。エアバスという響きには民間旅客機のイメージしかないが、軍用機部門もある。

 一方、Boeing社はPhantom Workという開発部門で新(主に軍用)開発を行っている。そこで開発されているPhantom EyeはZephyrのライバルとなる。Phantom Eyeは水素ガスを燃料として10日間の連続飛行を可能とする。主な目的は偵察であるが、長時間無人飛行により運用コストが大幅にカットできる。ZephyrもPhantom Eyeも見た目はグライダーで、プロペラ推進のために速度は遅く、一見するといかにもローテクである。また偵察以外に衛星機能を含むAeroVironment Global Observerもある。

 

 もともとはVoagerやNASAのPathfinderのように、記録樹立や科学調査のための技術開発が目的だったグライダー分野だが、Solar Impulseなど大学やベンチャーが参入して基礎をつくり、本格的なビジネスとして成り立つ見込みがたつと、大企業が本格的に参入して来た。GoogleとFacebookもそれぞれソーラー無人機の開発企業を買収して、無人機で高速インターネット無線通信を各地の開発途上国で展開する予定だ。大気圏と宇宙の境界領域(100km)は極超音速機が本命だが、20-30km領域はグライダーが本命のようである。

 より高空から広域をカバーする情報を得ることは同時に、広範囲な地域の住民が監視下に置かれることに他ならない。監視カメラが氾濫している現代社会を反映しているようでもある。

 

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