UV光による移動体間高速光通信

地上の量子暗号通信では光ファイバー通信が使われる。しかし光源に使われるLEDには太陽光の可視光の干渉の問題や移動体間高速通信の同期の困難さが壁となっていた。このため北京の科学アカデミーの研究グループは紫外線(UVB)(注1)による移動体向けの高速光通信技術を開発した(Sun et al., Optic Express 25, 23267, 2017)。

 

(注1)UVBは波長310-280nmの紫外光で、大気の透過率は0.5%だが、日焼けを引き起こす。

 

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Credit: ledsmagazine

 

2点間の光通信ではフォトンビームの高精度な幾何学的位置調整が重要であるが、移動体間通信では光学的精度を維持することが難しいことから研究グループは見通し外通信(nonline-of-sight)(注2)と呼ばれる通信技術の開発を行ってきた。太陽スペクトルに含まれるUVBはオゾン層で吸収されるため、この波長の紫外線を通信に用いると太陽光との干渉を避けることができる。またUVBは空気中の微粒子(エアロゾル)で散乱が発散するため、受信側の検出位置調整が厳密である必要もない。

(注2)携帯に使われるマイクロ波は直進性が高いため2点間通信には遮蔽物が」ない(見通しの良い)ことが必要となる。帯域の低い通信やワンセグなどでは高出力送信機と無指向性アンテナで見通し外通信が可能となる。ここでは光散乱を利用して光パルスの霧のようにして移動体間通信を可能にする技術を指す

 

そこでUV-LED光源と紫外光検出器を組み合わせて、光源と検出系のなす角度が12度までの71Mb/sの速度高速通信が可能になった。研究グループは出力をあげて長距離通信を実現するためのR&Dを継続する。中国では日中のWi-Fiを光で行うLi-Fiの研究にも着手している。UVBは人体に影響を与えるが影響のない低出力でのLi-Fiにここで紹介した技術が応用できるだろう。しかし低出力でも電磁波過敏症が問題となるように長期間の照射が人体に与える影響も調べる必要があると思われる。

UV-LEDではガラス封止型が日本の企業によって製品化されている。(下図)

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Credit: toyoda-gosei

 

中国の量子暗号通信技術は実用化を含めれば世界先端にあることは異論のない事実である。筆者は2016年の秋に中心となる上海の量子暗号通信研究所を訪れた。リーダーの潘建偉教授(科学技術大学)から近く衛星を2基打ち上げて中国全土をカバーする計画を聞いたときは半信半疑であった。しかし中国は2基の衛星が打ち上げ、世界初の量子暗号通信衛星を実用化した。

そのとき北京から上海までの光ファイバーでの通信が可能であったが、科学技術大学のあるHefei市内のキャンパス間から始めて、徐々にファイバー回線を延長していき北京、Hefei、上海を接続に至った着実な展開に感心した。量子暗号通信は軍事利用という印象が強いが、金融・商取引は仮想通貨に移行することを視野に入れれば、イリジウム計画のような世界を量子暗号通信衛星ネットの必要性は高い。

 

 

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