スピン電流による磁気秩序と超伝導制御〜スピンゆらぎメカニズムに黄信号か

スピン電流の制御によるスピントロニクスは現在、最も注目されている分野のひとつだが、韓国KAISTの研究グループは鉄系高温超伝導体にスピン電流を注入して電子状態への影響を調べることに初めて成功した。

 

鉄系高温超伝導体の電子状態は電子相関が強い影響を与えておりペロブスカイト系高温超伝導体とも異なるものの、両者を比較することでスピンゆらぎの超伝導メカニズムの役割を明らかにすることにつながると考えられている。特に鉄系超伝導体の場合には、相図嬢は相反する関係にあるはずの超伝導状態と磁気秩序の共存が注目される。

研究グループはスピン偏極走査型トンネル顕微鏡(SPSTM)でFeAs層とSr2VO3層が積み重なったSr2VO3 FeAs単結晶の磁気秩序と電子状態を調べた。通常は超伝導状態でFeAs層はC2磁気対称性の秩序を持つが、スピン電流の注入によって超伝導状態が消失しC4磁気対称性に変化することを見出した。(Choi et al., Phys. Rev. Lett.119, 227001, 2017)。(下図)

 

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Credit: Phys. Rev. Lett.

 

通常のSTMチップはスピン偏曲のない金属(W)が用いられる。研究グループはSTMチップに反強磁性の金属(Cr)を用いたことで、局所的に超伝導状態が壊され別の秩序状態に変化したものと考えられる。この結果はスピン電流注入による磁気秩序と超伝導状態を制御できることを示す初めての実験となった。一方、他の研究グループは強磁性金属(Fe)チップを用いた実験を行っていた。

C4対称性が超伝導を壊す理由について、研究グループはシミュレーションと比較することによってC4状態の低エネルギースピンゆらぎは高温超伝導状態を維持できない、と推論している。このことは純粋なスピンゆらぎのみでは高温超伝導ペアリングが達成できないことを暗に示しているが、これまでの数値実験ではスピンゆらぎで実現する超伝導臨界温度は低いという事実に矛盾しない。このことはこれまで主流であったスピンゆらぎによる高温超伝導メカニズムに逆風となる。

これまでも議論が続いてきた高温超伝導メカニズムの解明に拍車がかかりそうだが、理論の修正は避けられそうにない。純粋な電子相関だけで超伝導が生じるスピンゆらぎメカニズムは多くの理論家の支持を集めて、主流となって言ったが実験の中には矛盾するものも多い。数値計算で高温超伝導とならないということも難点であった。今後はスピンゆらぎの正当な評価を踏まえた機構解明に拍車がかかることが期待される。

 

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