スピン軌道トルクデバイス

スピン軌道トルクでトポロジカル絶縁体(強磁性体)に室温で磁化反転させるスピントロニクスデバイスが模索されている。ランダムアクセス磁気メモリなど最新の不揮発性磁気メモリでは電流駆動のスピン軌道トルクによる磁化反転に基づいている。スピン軌道トルク駆動の磁化反転をスピントロニクスデバイスでも模索する試みが世界中で活発化している。

 

シンガポール国立大学の研究グループは室温で、スピン軌道トルクでトポロジカル絶縁体(Bi2Se3/NiFe)の磁化反転させることに初めて成功した(Wang et al., Nature Comm. 8, 1363, 2017)。この物質を用いれば回路を微細化・集積してスピントロニクスデバイスが製造できるものと期待されている。

スピントロニクス論理デバイスは電流制御に寄らないので高速処理でも発熱の問題がないため、スパコンを初め将来のCPU素子として期待を集めているが、これまで室温で動作する回路は実現していない。

トポロジカル絶縁体は特殊な電子構造(フェルミ面)を持ち、絶縁体でありながら表面は伝導性がありスピン軌道相互作用が強く、スピンの向きがキャリアの運動方向に依存し、常に運動方 向に垂直になる(スピン運動量ロッキング)性質を持つ。スピン運動量ロッキングによって電流がトポロジカル絶縁体表面を流れる時に電流と垂直方向にスピンの向きが揃う。これがスピン軌道トルクデバイスの動作原理になる。

 

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Credit:National University of Singapore

上図aはトポロジカル絶縁体のデイラックコーンとスピン運動量ロッキングの模式図。bは試作されたスピン軌道トルクデバイス、c—eは磁気反転スイッチング。

これまでの代表的なトポロジカル絶縁体Bi2Se3ではバルク状態と2次元電子ガスがスピン軌道トルクに重なり、うまくいかなかったが研究グループは8nmのBi2Se3膜を用いることで、スピン軌道トルクの効率を室温で1.75となることを見出し、デバイス動作が可能となった。

 

また従来のスピン軌道トルクデバイスの電流密度は107-108A/cm2と大きく発熱の問題があったが、今回の材料では6x105A/cm2とはるかに小さい。Bi2Se3膜(8nm)やNiFe膜(6nm)はMBEで作成できるので既存の製造技術で低電流駆動のスピン軌道トルクデバイスの製造が可能になった。

 

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