癌発生の新しいメカニズム〜選択性スプライシング

死亡原因のトップに君臨する癌はDNA複製、修復機能など正常細胞の基本的なメカニズムが寿命(アポトーシス)を持たなくなることによると考えられてきた。癌発生メカニズムの詳細は別記事ガンとは何かーその研究展開の歴史を参考にしていただ期待。こ子ではそれとは異なる新しい発生メカニズム選択的スプライシング(注1)に関する最新の研究(Cell Reports, 20, no. 9 (2017): 2215-2226)を紹介する。

 

正常な細胞の生命サイクル(寿命)を持たない癌細胞発生に至る選択的スプライシングの研究で癌発生メカニズムの理解が進み新しい癌治療に結びつく可能性があるため選択的スプライシングは現在、癌研究の最先端分野となっている。

(注1)DNAからの転写過程において特定のエクソンをとばしてRNAから一部分を取り除き、残りの部分を結合する「スプライシング」を行うこと。

Fig 05 05 0

Credit: oregonstate.edu 

 

DNAは細胞成長のいわば「マニュアル」で、成長、分裂、アポトーシス(細胞死)までの過程(生命サイクル)がそれにしたがって進行していく。DNAマニュアルを読み取って翻訳し一糸乱れず複雑な蛋白質を合成するRNAは精密な「分子機械」と表現される。この時に選択的スプライシングが働くと種類の異なるRNAが製造されることがある(上図参照)。

 

選択的スプライシングは正常でない細胞(癌細胞)がつくられるもう一つのチャネルとなる。研究では癌遺伝子アトラス(注2)に登録された4,000名の癌患者を対象として、腫瘍ごとに選択的スプライシングを調べ、この効果が遺伝子の機能に与える影響を調べた。

(注2)癌遺伝子アトラス(TCGA)はNIHが推進する癌ゲノムデータベース。乳癌、肺がん、など、組織ごとに数100サンプルのデータが登録され、公開され研究目的に自由に利用することができる。データはcBioPortalで閲覧が可能。

研究の結果、選択的スプライシングが蛋白質の機能を喪失させること、特に癌細胞により変異を受けた部分に強く影響することが明らかになった。このことから逆に選択的スプライシングを調べれば、腫瘍の種類やステージに関する知見が得られることを意味している。

 

Figure 1

Credit: comprna.upf.edu

 

遺伝子変異と並んで癌細胞(腫瘍)を特徴付ける選択的スプライシングの理解で癌細胞発生に至る蛋白質の変化を特定できる。

正常細胞を癌細胞に変える、言い換えれば癌細胞のできやすさ、に影響する選択的スプライシングメカニズムの研究により癌研究の進展が加速すると期待されている。

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.