血液癌幹細胞のキルスイッチはビタミンC〜白血病治療に光

高酸化作用を利用した高濃度ビタミンC点滴療法は新しい癌治療法として最近注目されているが、最新の研究では別のメカニズムで癌細胞を正常細胞細胞のようにアトポーシスを迎えさせる、すなわち寿命を短くすることができることを明らかにした。米国ニューヨーク市のペリマター癌センターの研究グループはビタミンCが血液中の癌幹細胞の寿命を減らす作用があることを発表した(Neel et al., Cell online Aug. 17, 2017)。

 

TET2酵素の役割

白血病など遺伝子的な変異で幹細胞から血液細胞を作るときに使われる酵素(TET2)の能力が低下することが知られていた。今回のマウスでの実験でビタミンCが欠如していたTET2の能力を回復させることが明らかになった。

TET2機能障害を引き起こす遺伝子変異は急性骨髄性白血病患者の10%、白血病の前期症状である骨髄異形成症候群患者の30%、慢性骨髄性白血病患者の50%にみられる。その場合、異常な癌幹細胞が正常な血液細胞の形成を妨げるため貧血、免疫性が低下することによる感染症、出血などが起こる。最近の試験ではTET2に関連する遺伝子変異は癌患者全体の2.5%に見られる。

 

鍵となるエピジェネテイクス

研究グループはTET2とシトシンの関係に注目した。頻繁なメチル基の脱着は幹細胞が筋肉、骨、神経、など様々な細胞を作る上で欠かせないプロセスであり、DNA(シトシン)メチル化などのDNAの配列変化によらない遺伝子発現の制御機構(エピジェテテイクス)によって特定機能を停止させることができるからである。

TET2はメチル基の脱離に必要な酸化を分担する酵素である。研究グループによれば癌患者はTET2機能が欠如するために癌細胞に正常細胞とキル・ スイッチ「寿命」がセットされない。そのため癌細胞はアトポーシスせず、正常細胞の寿命を無視して増殖を続けることになる。

 

遺伝子操作でマウスのTET2機能を停止させたものと正常なものをつくり、ビタミンCの効果を調べたところTET2機能を復活させることができた。このため研究グループはビタミンC療法が白血病治療に有効であると考えて、さらに癌細胞のDNA損傷の修復をブロックするPARP阻害剤(薬剤)と併用することを提案している。

癌細胞を直接殺す化学療法から発想を転換して癌幹細胞を正常細胞に戻すことによって正常細胞に備わっているキルスイッチを発現させて寿命を減らすことは白血病だけでなく根本的な癌治療を変えるかもしれないと期待されている。

 

なおTET1に対するビタミンCの効果については別の論文がある。こちらはヒストン脱メチルジオキシナーゼの活性に作用する。エピジェネテイックな効果の分子科学的な研究の重要性が高まっている。

 

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Credit: Nature Genetics

 

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