低エネルギーX線の観測で暗黒物質消滅に新理論

暗黒物質は謎に包まれている。1930年代に存在が予想されていこう世紀を越えて暗黒物質の正体が探求されて来たが、膨大な研究努力にもかかわらず、理解が進んでいない。観測にかからないことが研究進展の遅い理由でもある。しかし全宇宙の存在比率では圧倒する存在であるのにその存在を裏付ける素粒子も発見されていない。

 

宇宙の23%をしめる暗黒物質

暗黒物質は宇宙の23%を占めると考えられている(下図)。厳密には天文学的な観測結果を説明するために考えられた仮想的な物質である。 

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Credit: hap-astroparticle.org 

 

暗黒物質を仮定しなければならない理由は、下図に示すように銀河の回転観測結果は光学的に観測できる物質の質量の10倍もの「見えない物質」がなくてはならないことになるからである。下図にあるように銀河の外側の回転速度は光学的に見える物質を仮定したより大きい。

 

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Credit: astro. wsu

 

暗黒物質粒子の正体

グーテンベルグ大学の研究チームはこれまでの理論で予想する質量の大きい粒子と異なり、暗黒物質をつくる新素粒子の質量が電子の1/100と極めて軽いとする新理論を発表した(Brder et al, Phys. Rev. Lett. 120, 061301, 2018)。

これまでの考えでは暗黒物質が存在しなければ、恒星が銀河の中心を公転しないことになる。暗黒物質はほかの物質との相互作用をほとんど起こさない、重い質量をもつ未知の粒子WIMP(ウインプ)(注1)と考えられている。

(注1)暗黒物質のうち、質量エネルギーに比べ運動エネルギーが小さい冷たい暗黒物質の一種とされ、超対称性粒子であるニュートラリーノのほか、アクシオンが候補に挙がっているが、いずれも加速器衝突実験や宇宙観測で発見されていない。

 

最近の天文学研究者の間には暗黒物質がウインプである可能性が低いとして、これに代わる新理論への興味が高まっている。研究チームは2014年に観測された独立した観測結果を解析して、以前は観測されなかった銀河および銀河クラスターからの低エネルギーX線(3.5keV)が暗黒物の手がかりとなるとして注目している。

 

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Credit: profmattstrassler

 

暗黒物質消滅とX線発生

暗黒物質の崩壊によってX線が放出されることは予想されていたが、グーテンベルグ大学のPRISMA研究チームは単純な崩壊ではなく、暗黒物質消滅は電子と陽電子が衝突するように2つの暗黒物質粒子が衝突して消滅するプロセスによると考えている。研究チームによれば通常は質量が極めて軽いとそのような消滅の可能性は低いと考えられるが、そう仮定するとこれまでの観測結果はよく説明できるとしている。

研究チームの考える暗黒物質は質量が数keVと極めて軽いフェルミオンで重力を除く標準 模型のその他すべての基本的な力と相互作用をしないとされる仮説上のニュートリノ、ステライルニュートリノ(下図)である。それらが衝突すると最初に中間状態が形成され、次にX線を放出して消滅する。

 

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Credit: sciencedirect

 

低エネルギーX線のより精密な観測によって新理論が立証されることになるため、欧州宇宙局(ESA)はe-ASTROGRAMを推進している。数keV領域のX線観測が重要になったが、それはこれまで高エネルギー領域が主であった観測衛星機材にも加速器実験にも大きな影響を与える。もしかすると暗黒物質は意外に我々に身近な存在なのかもしれない。

 

 

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