地球磁気圏シースに巨大な電磁流体乱流

最近の研究で太陽風と地球を守る磁気バブルの境界(地球磁気圏シース)の電磁流体乱流で運ばれ散逸するエネルギースケールが極めて大きく、乱流のエネルギースケールは太陽風の数100倍にも達することがあることが明らかになった(Hadid et al., Phys. Rev. Lett. 120, 055102, 2018)。

地球を含む太陽系の惑星は高エネルギー荷電粒子の太陽風に晒されている。太陽風をまともに受けながら、地上の生命体がその影響をほとんど受けないのは地球磁気圏のおかげである。しかし地球磁場と太陽風の相互作用でが形成される境界領域(地球磁気圏シース)では、地上からは想像もできない電磁流体乱流が荒れ狂う。

 

standard sans both

Credit: mps.mpg.de

 

(注1)磁気圏界面と周囲媒質(星間物質)の境界(バウショック)に接した磁気圏最外側領域で太陽風の圧力で内側に向かって広がっている(上図)。プラズマ乱流が存在し地球磁気圏シースやバウショックの構造に強い影響を与える。

 

物理現象としての太陽風プラズマと地球磁場の研究は古く、個別の現象としての理解は進んでいたが、地球磁場と太陽風の相互作用や地球磁気圏シース(注1)と呼ぶ乱流などのよくわかっていない部分も多かった。太陽風の中で乱流がプラズマ過電粒子を加速し、1-100kmに及ぶ広い領域でエネルギー散逸に関わることが知られており、同様なメカニズムは地球磁気圏シースでも存在すると考えられてきたがこれまで検証はされていなかった。

地球磁気圏シースではプラズマの電子密度揺らぎが大きいため、太陽風より強い乱流を生じるが、最近になるまで理論的取り扱いが困難であった。2007年から2011年に欧州宇宙局(ESA)のCluster(下図)とNASAのTHEMSミッションで得たデータがこのほど解析された。

 

Mag SW Overview

Credit: ssg.sr.unh.edu

 

それによるとエネルギーカスケードを作り出す乱流で生じた地球磁気圏シースの密度と磁場揺らぎは太陽風に比べて数100倍まで増幅されることが明らかになった。また地球磁場付近のエネルギー輸送は10-13J/m3sec-1に達し、エネルギー散逸は乱流マッハ数の4乗に比例することがわかった。乱流マッハ数(注2)は地上からの観測で得ることができるが、エネルギー輸送係数を決定するにはCluster(下図)のような実測に頼らざるを得ない。 

(注2)乱流の密度変動効果を決めるパラメータ。高マッハ数は圧縮性、低マッハ数は非圧縮性乱流を与える。 今回のデータは現在進行中のNASAのJunoミッションやESA-JAXAのBepiColomboミッションと比較される予定である。今回得られた経験的な相互作用が一般化できれば、銀河系の星間物質など直接観測できない宇宙プラズマの理解につながると期待されている。 

 

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Credit: ESA

 

普段の生活では地球が奇跡的に太陽風から守られて入ることを実感することはほとんどない。オーロラが見えやすかったり、磁気嵐の影響が局所的に出るくらいである。欧州宇宙局(ESA)やNASAを中心とする国際協力で打ち上げられた磁気観測衛星で地球磁気圏シースの実測データが蓄積され、太陽風から地球を守る最前線、地球磁気圏シースの詳細が次第に明らかになりつつある。生命体の持続性は地球磁場に依存している。そのため他の惑星に移住してもまず地場をもつ惑星を探す必要がある。

なお21世紀は核融合やウエークフイールドを利用したコンパクト加速器なが実用化されるなどプラズマの物理が発展を遂げることが期待される。

 

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