土星の放射性帯の探査で新発見〜プロジェクト予算延長で実現

高エネルギー粒子(電子と陽子)からなる地球を取り巻く放射線帯(ヴァン・アレン帯)のおかげで我々は太陽フレアから守られている。その詳細な構造はエクスプローラー衛星による1958年の発見以来、人工衛星の観測で次第に明らかになってきた。日本が打ち上げた「あけぼの」衛星で高エネルギー粒子の定量的な解析も進んだ。

 

一方で太陽系の地球以外の惑星にも放射線帯が存在することはあまり知られていない。例えば土星の輪の外側には強い放射線帯が存在するが、地球の磁場に捕獲された電子・陽子からなるヴァン・アレン帯とは大きく異なることがわかった。ヴァン・アレン帯は太陽フレアに強く影響されるが、土星の放射線帯は太陽フレアとは独立に形成されたものであることが明らかにされた(Kollmann et al., Nature Astronomy, online Oct. 30, 2017)。土星の放射線帯の数100MeVの高エネルギー粒子(陽子)も太陽フレア起源であるが、惑星側との相関が低い。

マックスプランク研究所(MPI)の研究グループはNASAが打ち上げたカッシーニ衛星に組み込まれたMIMI-LEMNSという装置(下図)を用いて放射線帯の研究を行った。MIMIはMagnetosphere Imaging Instrment、LUMNSはLow Energy Magnetosphereic Measurement System)を指す。詳細はMPIのウエブサイト参照。

 

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Credit: MPI

 

太陽の活動と太陽フレアが11年周期であることは知られている。そのため放射線帯の長期変動観測はそれよりも長い時間スケールが必要となる。当初のカッシーニの観測期間は4年でそれには不足であったが、幸運にも観測期間は度々延長されたおかげで、13年間観測を続けることができた。

LEMNSによる陽子の観測によると放射線帯は土星の内側の輪から外側に伸びて9番目の月(Teths)の軌道にかけて285,000kmに渡って伸びていることが明らかになった。地球の場合には太陽風にのって荷電粒子が運ばれてきて惑星(地球)の周囲を高速で運動している。そのため太陽フレアに強く影響される。土星の場合には太陽フレアと独立のために、影響を受けない点が大きく異なる。研究グループは太陽のEUVが関係していると考えている。EUV光は惑星大気を局所的に加熱するが、このとき乱気流が生じて磁場を間接的に変化させ荷電粒子が急激に広がり、土星の月に衝突すると強度が弱まることが、EUV光強度の観測で明らかになった。

 

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Credit: NASA/JPL/Space Science Institute

 

この観測機器はヴァン・アレン帯にも適用が可能で将来は地球にとってセーフテイネットでもある放射線帯のより詳細な知見が得られる可能性がある。

下にLEMNS検出器の動作模式図を示す。

 

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Credit: MPI

惜しまれつつ日本のXMASS実験はアップグレード計画が認められず、予定期間で終了することになったが、カッシーニ観測は延長に延長を重ねた結果、当初の実験期間の3倍もの観測を続けることができた。日本ではプロジェクトが終了すると機器類は廃棄されてしまうので、ちょうどデータが順調に得られるようなタイミングで、退場を勧告される。新しいプロジェクトに活路を見出して投資する「消費型」研究をそろそろ見直す時期にきているのかもしれない。

 

 

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