地震を予知する電離層の挙動〜衛星データの活用

地震予知は国民に期待され相当な国費を投入しながら、未だに(公式には)手法が確立していない。電離層は敏感な地殻変動センサーであり、間接的に影響を受ける電波の受信状態から予知を試みた成果も出ているが、公式評価は曖昧である。東北沖地震の余震は5年以上経過しても続いており、廃炉までの見通しが立たない福島原発建屋の安全性が問題視されている。果たして電離層の挙動を直接観測することで予知は可能なのだろうか。

 

 電離層の挙動で地震を予知できるか

京大の梅野健教授らの研究グループは、2016年4月の熊本地震発生前後でGPSを使い、大気よりも上の上空約300キロにある電離層(注1)を分析し、地震が発生する1時間ほど前から、熊本付近の電離層で電子の数に異変が起きていることを見出した。同様の結果は2011年の東日本大震災でもNASAが観測していた。

(注1)高度60-500kmのD、E、F1、F2の4層からなる電離放射線で気体分子がイオン化している電子密度の高い領域である。ラジオ波(長波〜短波)は電離層で反射される。地震との関連は古くから報告されているが、興味本位とする批判もあり決定的な予知法としては確立していない。

 

衛星データの活用で地震予知

2011年の東北地方太平洋沖地震(東北沖合地震)では発生40分前から震源地上空の電離層の電子密度が増加したとされているが、NASAが赤外線衛星で観測した断層上空の大気の温度分布が3/5ごろから局所的に変化し始め、発生の3日前に最大になったことがわかっている(下図)。3日前に予知できていたらと考えると悔しいが、熱源の発生と同時に電離層の電子密度が増加した。 

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NASAの説明は以下のようになる。

地殻変動で放射性ラドンガスが放出されると、上空でその放射線による電離が起こる。そのため正負電荷が増大し。極性を持つ水分子が凝縮して液体となると熱放出が起こる。つまり大気温度の2Dリアルタイム観測で地殻の変動すなわち地震の予知が原理的に可能ということになる。

上に示した局所的な温度変化はこのために生じる。このほか電離層の電子密度など相補的な観測手法も動員して相関を解析すれば予知は可能なはずである。現実的に地球上を全て観測するのは現実的でないが、地震発生確率の高い地域(断層に沿った地域)を詳細に観測することから始めれば良い。

 

GPS衛星データ

NASAの観測した電離層の電子密度変化は興味深い。下のイメージは地震と津波によるエネルギーが電離層の電子密度(Vertical Total Electron Content, VTEC)変化を引き起こした様子を12基のGPS衛星と1200箇所の地上観測から推定したものである。ここで日本の形状をした影は衛星の動きによるゴーストで、電離層の変化は観測点(ドット)の色の変化として表示されており、電離層の変化の移動は津波の移動によるものである。

 

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Source: NASA

 

地震発生後、縦振動と横振動(レイリー)波が上空300kmにある電離層に到達して電離を引き起こし電子密度の変化が伝播していく様子がはっきり示されている。津波の影響は沿岸部にとどまるが膨大な質量を持つ津波が引き起こした重力波は西日本まで伝播している。

原子炉建屋や核廃棄物中間保存施設の長期安全性の担保も含めて地震の被害を最小限に抑えるため、地震予知予算で赤外線衛星を打ち上げ断層戦の上空の熱源観測を行うのは積極的な安全対策となるのではないだろうか。予知というと興味本位で扱う時代は少なくとも過去のものとなった。科学技術の水を集めてより積極的な対応策を講じるべきであろう。予知予算についてはさまざまな取り組みのフイジビリテイの調査の段階ではないように思える。これまで提案されてきた候補の中から可能性のあるものに絞り込んで集中予算を投入する実行フェーズに来ているのではないだろうか。

選択と集中は日本が不得意とすることであるが、地震予知も廃炉もフイジビリテイ調査段階をすぎたら、選択と集中が問われる。後者はまだその時期に来ていないが、地震予知における衛星データ活用は大きく進展している。

 

 

 

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