銀河中心のγ線ホットスポットは暗黒物質起源か

米国では新政権に移行する際に国立研究所の予算体系が大きく揺らぐ危険性(もしくは増額される好機)となる。大統領の科学技術への考え方に依存するためだけでなく役所のトップが全て入れ替わるためである。その圧力からか不明であるがこのところNASAから成果発表が相次いでいる。39光年先に移住可能な惑星の発見など、話題性のみを狙ったものもあるが、基礎科学の課題である暗黒物資について確証が得られたという発表は地道に積み上げられた成果である。

  

γ線ホットスポット

γ線ホットスポットの観測には先の記事でも取り上げた地上シンチレーターによるアレイ検出器があり、一方では大型加速器を使った粒子衝突実験でより積極的に暗黒物質の構成粒子を明らかにする研究が盛んである。それに対してNASAのフェルミγ線宇宙望遠鏡(以後、フェルミ望遠鏡)を衛星に搭載して宇宙からやってくるγ線の観測を行うものである。

2008年6月に打ち上げられたフェルミ望遠鏡は広域望遠鏡(Large Area Telescope, LAT)とγ線バーストモニター(Gamma-Ray Burst Monitor, GBM)を備えている。

前者は広域(全天の20%)のγ線のマッピングを行うための計測器、後者はパルサーのように特定領域からやってくる突発的もしくは間欠的なγ線バーストを計測する目的がある。GBMは暗黒物質が高エネルギーγ線に変換された痕跡から暗黒物質の構成粒子を調べる研究に使われてきた。

 

フェルミ望遠鏡について

フェルミ望遠鏡は2013年に当初の観測計画を終了してさらに5年間の延長が認められたものである。2018年度までに大きな成果が出れば予算の計測あるいは後継となる新型機の計画に移行する瀬戸際でもあった。そのGBMが銀河中心のγ線ホットスポットを観測し6年に及ぶデータの解析で、このほど暗黒物質の直接的な証拠を掴んだ。

GBMは下図のように立体的に配置された複数のBGO検出器(200keV-40MeV)とNaI検出器(8keV-1MeV)から構成されγ線を検出する(Astrophys. J. 702:791(2009))。NaI検出器は異なる方向に配置されていて、γ線バーストの方向を知ることができる。BGO検出器の測定レンジは広域データを計測するLATと重なるため、両者を組み合わせてγ線バーストの位置情報を確定できる。NaI検出器もGBO検出器も検出器として新しいものではないが、複数の検出器の信号を取り込む計測回路と相関解析に特徴がある。下の図でフォトマル1本の検出器がNaI検出器、2本対抗配置がBGO検出器である。

 

GBM detector locations

Credit: NASA

 

数年前にもNASAはフェルミ望遠鏡で銀河中心に暗黒物質の衝突によるとみられるγ線バーストを観測していた。しかし銀河中心にはγ線バーストのバックグラウンドも強く、研究コミュニテイの合意を得るまでには至らなかった。そのため研究グループは6年に渡る大量のデータを解析し、バックグラウンドを再現しこれを差し引く高度な解析によって精度を上げついに暗黒物質の確証をつかんだ。

バックグラウンドとなる高エネルギー事象を全て取り除いても、銀河の中心にある強いγ線を放出する領域(ホットスポット)が残る(下図右)。

 

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Credit: University of Chicago

 

確証が得られた暗黒物質

またこのホットスポットは銀河中心のブラックホールと中心が一致するが広範囲の領域のγ線強度分布は他の事象では説明できない。ホットスポットを説明するには暗黒物質を構成する新粒子のγ線への転換と考えるのが妥当であると結論された。ロジック的には消去法であるが、バックグラウンドの影響を取り除くのに必要なデータを6年間かけて蓄積したことがその確度を上げるのに役立った。

統計精度を上げて認知されるようにする努力とそのための高度な解析コードの利用は粒子衝突実験に習ったものである。両方とも膨大なデータ量であることに変わりはないが、フェルミ望遠鏡は何年でも観測を続けてさらに統計精度を上げることが可能である。絞り込まれたエネルギーに対応するピークを加速器実験で探し出す研究と連携することで効率が上がる。

今回のフェルミ望遠鏡の成果は科学的なインパクトの他、NASAにとっても大型加速器を抱えるCERNにとっても今後の予算獲得に大きな布石となることだろう。一方で暗黒物質の研究を看板に掲げる多くの研究にも大きな影響が出ると思われる。少なくとも歩かないかの議論の先にある構成する粒子の解明に中心は移らざるを得ない。

NaI検出器やGTO検出器というありふれた検出器の使い方次第で10年以上にわたる長期間、γ線バーストで暗黒物資にたどり着いた。マルチ検出器の時間・空間相関から生み出されるビッグデータをどう解釈するかというソフト的な進歩が求められているのかもしれない。

 

 

 

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