「放射ブレーキ効果」で減速される太陽表面の自転速度

太陽の自転は「差動回転」である。地球と異なり太陽は内部が表面と一緒に自転しない。そのため太陽の磁極と表面は同一の自転周期を持たない。太陽表面の自転速度は内部より遅く、また緯度によっても異なる複雑な回転運動をしていることが知られている。

 

ここで表面層と呼ぶのは150kmまでの光球(Photosphere)(注1)の太陽表面でその自転速度(下図参照)が、内部に比べて遅くなる理由は古くから知られていたが原因は不明であった。最近の研究によって表面層のエネルギーと運動量が光子輻射で放出される時に発生する特殊な減速メカニズムによることがわかってきた。

(注1)太陽や恒星の光を放つ表面のプラズマ層。

 

なぜ太陽の自転が地球にとって重要かと言うと、プラズマ層が噴きだす太陽フレアは地球磁場に強い影響を与えるからである。また地球環境が太陽の活動に依存しているので、気候変動は太陽活動の長期的変動をもろに受けてきた。赤道付近では自転周期は25日であるのに対し極点では35日となる。すなわち緯度で自転周期が異なる。

 

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Credit: NASA

 

自転速度はまた深度にも強く依存する。太陽の半径(Rsun)の0.7に相当する深さは"Tacholine"と呼ばれる領域(図中のSolar Dynamo)で対流圏と内部の放射層に分かれる。この差動回転は太陽磁場の発生源となる高温プラズマの中を流れる電流によると考えられている。

 

Fig4 5 Rotation

Credit: A. Kosovichev

 

米国(ハワイ大学天文研究所、スタンフォード大学)とブラジルの研究チームは表面層の自転速度減少の原因を解明した。研究チームは2010年から蓄積されたNASAの太陽探査衛星データを解析し、「放射ブレーキ効果」による減速メカニズムを考察した。

重要な点は表面層の輻射の大きい層ほど回転の減速が大きい事実で、太陽の輻射と自転速度の減少に相関があることで、このため研究チームはこの減速現象を輻射と関係づけた。光子放出により回転する表面のプラズマ層のエネルギーと運動量が失われる。

放出された運動量はプラズマの角運動量を減少させるが、内部では運動量は保存されている。このため光球すなわち表面のプラズマ層の速度減少が起き、"Poynting-Robertson effect"(注2)に似た数式で記述できる。

(注2)H. Robertson, Mon. Not. R. Astron. Soc. 97, 423 (1937)

 

太陽の自転は太陽風による磁気的な束縛も受けているが、輻射の大きい表面層では「放射ブレーキ効果」による効果が(太陽の寿命の時間スケールでは)大きい。研究チームは自転速度の減少の詳細な知見が得られれば、自転が太陽磁場への影響と太陽フレア放出についての詳しい情報が得られると期待している。

 

太陽活動が気候変動(地球温暖化)の主な要因であることが最近の論文で示されている(注3)。以下の図はそれらの代表的なものである。太陽活動の時間変化が北極の気温と太陽している。短期的な変動としてこれに暖流の効果が重なるが、少なくともCO2の増大との関連性が低い。気候変動は太陽活動を通して理解を深めることが重要である。

(注3)例えばD. Douglass & R. Knox, Phys. Lett. A (2014).

 

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Source: vademecum

 

なお太陽フレアの状況は本コラムのリンク先リストの宇宙天気予報とSpace Weather Prediction Centerで知ることができる。

 

 

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