ロシアのEELVーアンガラロケット

EELVとは

 Evolved Expendable Launch Vehicle : EELVとは何か。まさにデフレ時代の申し子、使い捨てでコストを最低限に抑えたロケットシリーズである。膨大な燃料を消費し開発、製作、打ち上げ、回収、どれをとってもコストのかかるロケット産業でも長引く経済不況の影響は例外ではなかった。コスト削減にとられた戦略は開発と製造を国から民間へ委託することと、用途によって異なるスペックの違いに対応して、製作することをやめ、基本的なモジュールの組み合わせで、低価格ロケットを実現しようということであった。

 

Delta EELV family

 

 EELVは人工衛星打ち上げのために開発されたデルタIVおよびアトラスVを総称するもので、その歴史は米空軍が1994年の構想に端を発する。それは旧式化して高コストになっていた衛星打ち上げ用ロケットを低コストの新規システムに置き換える計画であった。

 モジュール化というコンセプトは画期的であった。中心となるのは液体燃料の「コアステージ(1段目)」、標準化された「上段ロケット」、固体ロケットの「ブースター」の組み合わせでロケットのセミオーダーメードが可能となる。設計は大手の宇宙産業(ロッキード、ボーイング、マクドネルダグラス、アライアント)が競争で参加し、ボーイングイ社がデルタIVをロッキード社がアトラスVを開発した。

 

民間の参入

EELVの打ち上げ事業も民間に委託され、製作から打ち上げまで民間が関わる宇宙ビジネスが花開いた。さらに有人宇宙船の打ち上げに対応するためにEELVの改良も計画され、ロッキードマーテイン社が開発するオリオン宇宙船の発射にも使用可能であった。いったんは財政難でオリオン宇宙船(下のイメージ)に予定されていたデルタIVの発展系アレスロケットは中止になったが、オリオン宇宙船は復活し、2014年12月5日にはデルタIVヘビーで打ち上げられて、軌道に乗り無事に帰還した。

 

Orion spacecraft launch configuration 2009 revision

 

オリオン宇宙船とSLS

 オリオン宇宙船の本格的な打ち上げにはデルタIVより大型のロケットが必要となるためアレスロケットを置き換えるSLS(Space Launch System)を開発する。SLSはアポロ宇宙船を運んだサターンV型と同等の打ち上げ能力を有する巨大なロケットだが、EELVの概念であるモジュール化とその組み合わせで発展性を持たせる精神は引き継がれることとなった。図にSLSの発展型を示す。

779px-SLS configurations

 

 オリオン宇宙船の復活には多くのコスト削減の試みがなされている。例えば欧州宇宙機関の参加や貨物モジュール設計開発をエアバス社が担当することなど。中でもスペースシャトル方式と決別して使い切りの低コストロケットの採用が大きい変化である。モジュール化による採算性向上の道は自動車会社がプラットフォームを共有するのと似ている。コスト削減は宇宙産業にとってどのようなメリットとなるのか、今後の展開に注目したい。

 

ロシアのEELV−アンガラロケット

 12月23日に聞き慣れないアンガラ(Angara)という名前の大型ロケットが打ち上げられ、成功裏に衛星を軌道に運んだ。アンガラも米国のEELVと同じモジュール化して低コスト化と組み合わせによる多様性に特徴がある新世代のロケットである。

 ロシアには図に示すプロトンロケットシリーズがあるが、これを置き換えると同時に補助ブースターの付加により、推力をあげたアップグレードも可能とする発展性に富んでいる。アンガラロケットではシリーズを通じてユニバーサルロケットモジュール(URM)を共通に使用する。初段のURM-1を何本束ねるかで推力の異なるシリーズを形成する。必要に応じてURM-1を1, 3, 5または7本を束ねて使用される。なおすべてのアンガラシリーズは商業打ち上げに販売される。かつての社会主義国でもかつては国家の威信をかけた国主導のロケット開発と運用体制が、民間の関与率が高くなり、最終的には打ち上げビジネスで採算をとらねばなくなった。

 

ang 3a copy copy

 

アンガラロケットの概要

 今回打ち上げに成功したアンガラA5はURM-1を5基装備して、2段目はURM-2、3段目はブリーズと呼ばれる人工衛星を様々な軌道に投入する上段ロケットである。初期型のブリーズMはプロトンロケット(下の図)と組み合わせて4,385 kgの衛星を軌道に投入できる。後期のブリーズMおよびKMがアンガラロケットと組み合わされる。アンガラA5は、アンガラロケットシリーズの中でも重量級の機体で、現在運用されているプロトンMロケットとほぼ同じ打ち上げ能力を持ち、いずれは代替する予定とされる。

Early Proton-K rocket versions

アンガラ開発の背景

 ソ連の崩壊後はプロトンロケットはウクライナで生産され、それらを購入して来たロシアだがウクライナ問題の起こる以前から、ウクライナに依存しないロケット開発を目指して来た。ウクライナから購入コストの増加、旧式化したこと、そして毒性の強い燃料を使用したロケットから脱却して打ち上げリスクを減らしたい事情もあった。アンガラロケットはそのための計画であったが財政難のため紆余曲折があり、このたびようやく打ち上げに成功した。今回の成功で自主開発の宇宙事業が軌道に乗ることになるが、その背景にウクライナ問題があった。

 

 

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