ハイブリッドロケット

 「宇宙ビジネスのリスク」において民間主導(厳密には委託)の宇宙開発にはコスト優先によるリスクが原理的に伴うことをかいた矢先に、今度は先頭を走っていたバージンギャラクテイック社のスペーッスシップ2が墜落し2名の死傷者を出した。1段目のロケットエンジンの不調が原因のアンタレス爆発と同じく今回も、ロケットエンジンの問題が原因と思われた。母機から離れてロケットエンジン始動の直後の事故だったからである。

Virgin Galactic

 

 スペースシップ2(上)は大型の液体ロケットやより小型の固体ロケットと異なり推力も小さいハイブリッドエンジンを使用していたが、多くの危険が伴う出力の大きい地上から打ち上げるのでなく、高空で母機ホワイトナイト2から発進する極めて安全性の高いシステムであった。

 スペースシップ2の披露においてリチャードブランソンは従来の宇宙飛行に比べて100倍安全だと力説している。ハイブリッドロケットについて説明する。これまでロケット開発は大半の時間を大出力の得られる液体燃料ロケットの開発にあててきた。

 液体燃料ロケットでは燃料にヒドラジン(有毒)のような炭化水素に液体酸素を酸化剤として、別々の容器に保存しておき、燃焼質で両者を混合して点火する。現在では酸化剤に硝酸類、燃料にヒドラジンを用いるもの、液体酸素とケロシンあるいは液体水素を用いる組み合わせがある。古典的なヒドラジン燃料ロケットは旧ソ連が開発したもので、安定した運用に定評があったはずだが、アンタレスに使われたものは旧ソ連放出品を規格が合うように大幅な改造を施したものであった。

 

 映像をみる限り、発射台を離れてすぐ異常燃焼となり同時に推力が落ちた。液体燃料ロケットでは燃焼質の耐熱性に問題がなければ、燃料と酸化剤を送るポンプ系統の問題が多い。エンジンテストは下の写真のように一歩間違えば爆発事故で周囲が吹っ飛ぶ危険性がある。アンタレス事故原因の正式な発表は先になるが追って取り上げたい。

 

SpaceX engine test fire

 

 固体燃料ロケットは空洞をつくりまわりに置かれた円筒状の固体に点火して推進力を得る主としてミサイルや補助ブースター用に用いられる。ハイブリッドロケット(下)とは液体推進剤が納められた圧力容器と固体燃料が充填された燃焼室から構成されることから、古典的な液体燃料と固体燃料ロケットのハイブリッドという意味でハイブリッドと呼ばれる。ふたつの容器は弁によってこれらの二つは分けられていて、弁を開けることで燃焼室(固体燃料)に液体推進剤を供給し点火装置を用いて点火するものである。

 

SpaceShipOne schematic

 

 特徴として燃料が固体であるため、液体の燃料よりも密度が高く燃焼効率を上げられる、すなわち推力を上げることができる。欠点としては燃焼に伴い燃焼領域が変化するため一定の推力を安定に維持できないことである。この方式の経験は他の方式に比べて圧倒的に少ないこともあるが、これまでにわかっている事故原因は以下の事象である。

 燃焼室内の燃焼にとどまらず圧力容器を破損して爆発する可能性がある。この場合は燃焼異常というより爆発となる。燃焼室からの火炎や高温のガスが噴射器を通じて伝播し、酸化剤に点火してタンクの爆発を引き起こすこともある。いずれにしても母機から切り離されたら滑空で戻ることはできても、いったんエンジンを動作させて高速飛行に移る瞬間の事故は推力に依存した不安定な時間であるので、ロケットエンジンの信頼性が確率されない限り旅客を乗せることはできない。

 今回のスペースシップ2のハイブリッドロケットでは推進剤が初期のものからポリイミドベースに変更されている。問題は今回の飛行が独自に開発した新型エンジンの最初のテストであったことだ。メーカーのスケールドコンポジット社は地上での実験に失敗し、爆発事故で3名の死者を出している。ロケット開発には時間と労力の積み上げが重要で、コスト重視の民間主導では原理的に無理なことが多い。コストと安全性の両立が求められる。

 

 しかし実際の事故はロケットエンジンによるものではなかった。一番上の写真で示されるようにスペースシップ2では尾翼が成層圏突入時に立ち上がって空気抵抗を増やし、パラシュートのように減速する画期的な設計となっていた。しかしこの角度にする速度はマッハ1.4以上とされていた。マッハ1付近では衝撃波で機体にかかる負荷が大きいためだ。しかしパイロットはマッハ1でロックを解いたが、可動翼が動いてしまい事故になった。安全装置を外した際に誤動作したということで、ロケットエンジンとは関係ないことがわかったが、商業飛行のスケジュールに影響が及びそうである。

 

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