核融合の実用化は10年以内か

 シェールガス(オイル)への期待が急激にしぼみ、変わってクリーンエネルギーの本命、核融合への期待度が高まっている。シェールガス革命と銘打ったアドバルーンをあげて望んだ米国政府は相次ぐ投資失敗をぬぐい去るように、官民で核融合の実用化が近いとする発表が相次いだ。偶然なのか。それとも化石燃料で世界を支配して来た米国が、クリーンエネルギーでも指導的立場に立つための苦肉の策だったのか。

 

 ご存知のように純粋水爆(起爆に原爆を使用しない核融合反応)は米国が、水爆完成後に開発に取り組んで結果を出せずに終わった。核融合反応は原子核どうしを重合して別の元素を作り出し、膨大なエネルギーを熱源に利用しようとするものである。具体的には重水素とトリチウム(3重水素)が、ヘリウムと中性子に転換する。これらの燃料を高温プラズマで加熱すると核融合反応が起こる。その温度は1億度以上でしかも安定に持続しなければならない。

 そのための核融合炉は磁場閉じ込め式(注)と慣性閉じ込め方式があり、前者はトカマク方式が代表的な装置で、日本は長い研究開発の歴史がある。2007年に入力パワーより大きい出力が得られるという臨界プラズマ条件をクリアし、JT-60で実用炉に向けた技術開発を予定している。その結果を生かして国際共同研究グループはフランスに発電まで含めた実用炉(下の写真)を建設中である。

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(注)プラズマ高温閉じ込めを磁場で行う方式でトカマク型と相補的な特徴を持つヘリカル型は核融合科学研究所が研究開発を行っている。

 一方、米国は後者のレーザー照射の慣性閉じ込め方式にこだわり、高出力レーザーを燃料ペレットに集中して、原性によりプラズマ閉じ込めを行う。今回の米国の発表のひとつはこの研究を推進するローレンスリバモア研究所からのものである。

 リバモアの研究グループの論文Nature 506, 343?348 (2014)によればレーザー波形を改良することによりプラズマ発生効率を1桁あげ、従来のデーテリウムートリチウム燃料(注)で初めて、入力を出力が上回ったという。これを核融合が起こっている証拠とし、将来は本格的な核融合が可能だとしている。ちなみに外部から加えたエネルギーと核融合反応により発生したエネルギーが等しくなる条件、「臨界プラズマ条件」は日本では2007年に実現している。

 

Preamplifier at the National Ignition Facility

 

 一方で異端の挑戦者たちが登場し話題をさらっている。イギリスに住む13歳の少年(ジェイミーエドエワーズ君)が、手作りの装置で、核融合反応に成功したという。装置は極めてシンプルで真空系に重水素を導入し高圧電極でプラズマをつくるもので、高圧を印可したことで中性子が発生したことで、核融合反応でヘリウムと中性子に変換されたことの証拠としている。似たような実験は米国で14歳の少年が成功している。定量的な報告ではないがもしこのようにしてスケールは小さくとも臨界プラズマがつくれるのなら、苦労しない。

 米国のもうひとつの発表は軍需産業からのものだった。ロッキードマーチン社は、実用炉をコンパクト化する技術を開発し、100MW発電機を10年以内にトラックに積めるサイズで実用化すると発表した。情報源をたどるとワシントンポストの記事にたどり着くのみで、どのような技術が使われているかについての発表がないため、現時点では怪しいと考えたくなるが、もしジェイミー訓のアイデアを進化させて磁場閉じ込めやレーザー圧縮なしに、核融合反応で実用発電が可能になれば、産業革命以来の展開となるだろう。しかし現時点で専門家の意見は冷ややかだ。

 科学少年のような核融合を自作の装置で実験する人たちをFusorと呼ぶ。したの写真はその一人Hirshの実験装置である。これで済めばもちろん国家プロジェクトや軍需産業もいらない。

 

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