除去ができない核種トリチウムとは

 トリチウム(3重水素)は質量数3の水素の放射性同位体である。核実験で環境中に大量に放出されて宇宙線で生じるバックグラウンドが大幅に増えた。福島原発で汚染水のトリチウム濃度が1桁増大し、話題になっている。

Tritium Decay Scheme-de


 トリチウムは半減期12.3年でβ崩壊でヘリウム3へ変わる(上図)。体内に取り込まれるとβ被曝するが、電子の運動エネルギーが5.7keVでガンマ線に比べれば低い。そのため皮膚から内部への侵入ができないため、重要視されてこなかったが、以下に示す特殊な性質もあり濃度が高ければCsやSr同様に体内被曝の可能性はある。

 東京電力は11日、福島第1原発2号機東側の港湾近くに設置された井戸で採取した地下水から、トリチウムが15万Bq/L検出されたと発表した。前回採取した時に比べ、9日で10倍超に濃度が上昇した。

 トリチウムが厄介な点は水素と置き換わってHTOとして存在するため、水と区別する事ができないため、同位体分離をしないと除去できない点にある。実際には大量の汚染水の同位体分離は不可能であるので、除去が出来ない唯一の核種と言うありがたくないレッテルをもらうことになる。海水のトリチウム濃度は、通常は数Bq/Lより少ないので、これと比べれば15万Bq/Lは1万倍となる。

 実際には海洋に流れ込むと濃度は希釈され、これまでも数千Bq/Lの海水測定値の報告がある。10倍というのはその汚染された海水に比べて、という意味なので自然界のバックグラウンドに比べれば非常に高い。このまま濃度が増え続けるようなことになれば地下水対策を加速しなければならない。とりあえず濃度の上昇に注意を払うべきである。

 またトリチウムは掘削の際に使われる工作材料として応用がある。また水爆の起爆材の他核融合炉の燃料として重要である。

写真は米国のレーザー核融合施設のトリチウム精製システム。ここでは最近、はじめて出力が入力を上回り核融合実用化に一歩近づいた。

 

Tritium processing at the National Ignition Facility

 

 トリチウムが発光材料としてLUMINOX腕時計に使われており、放射性物質のため電池交換が許可されていないことは別記事でふれた。使ってみると通常の夜光塗料より30倍明るいとされるだけあって、視認性は非常に高い。

 

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