エバネッセント光単一分子バイオセンシング

単一分子バイオセンシングとは分子に標識した単一分子の蛍光を観測する生体分子1個を可視化する手法である。標的分子に注目して信号をバックグラウンドから抽出することが不可欠となる。それにはスライドグラスとサンプル溶液の境界面で全反射されるときに発生するエバネッセント光(注1)を励起光とする。

 

エバネッセント光

(注1)全反射条件において低屈折率媒質側にしみ出る光で、全反射界面から波長程度の領域に局在する特徴がある。エバネッセント光は表面付近の情報を持ち回折限界を超えて空間分解能での観察が可能になる。

クイーンズランド大学の研究グループは光学マイクロキャビテイとプラズモン共振器を用いた高感度単一分子バイオセンシングの欠点であった生体損傷の問題に取り組み、エバネッセント光により照射光強度をのパワーを4桁下げた損傷のない測定技術を開発した(Mauranyapin et al., Nature Photonics online June 16, 2017)。

これによって損傷なしに3.5nmまでの単一分子の動きが可視化でき流ようになった。下図aはナノファイバー光ヘテロダイン検出系(注2)を示す。灰色の部分の高純度水のドロプレット中のナノ粒子をナノファイバーに近接したプローブ光で検出する。下図のbは測定系の模式図である。

 

nphoton.2017.99-f1

Credi: Nature Phtonics

 

(注2)(高周波の搬送波に信号成分をのせて運ばれた信号を局発信号とのミクシングにより低周波に変換してから取り出す)ヘテロダイン検出法をコヒーレント光の検出に応用したもの。周波数の異なる2つの単色光を重ねて干渉させるて生じる差周波数のビート信号の振幅はそれらの振幅の積となることを利用して、微小振幅の信号成分を増幅する。

 

蛋白質モーターの研究に貢献

単一分子バイオセンシングによって、細胞運動や筋収縮に代表される生体内の動きの担い手(蛋白質モーター)となる生体分子の動きが可視化できるようになる。通常行われている蛍光アクチンフイラメントの観察に比べて単一分子観察には100倍以上高感度が要求されるが、エバネッセント光励起でそれが可能になる。将来的にはレーザーで蛋白質モーターを操作するレーザートラップによって単一分子を取り出す研究開発も進んでいる。

生体単分子を可視化して操作するナノ科学は光学顕微鏡の最先端の技術であり、蛋白質モーターの研究のエンジンとなっている。

 

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