常磁性金属の添加でつくる新しい強力磁石

現在最も強力な永久磁石、ネオジウム磁石(ネオジウム(Nd)と鉄(Fe)を主成分としたNd-Fe-B磁石)は加速器技術を支える存在と言える。その生産量は年々増大する一方で、いまでは驚くような低価格で誰でも手にすることができる。それでもネオジウム磁石を超えるより強力な永久磁石の開発は脈々と続いている。

 

新型磁石の作り方

米国エイムズ国立研究所(注1)の研究グループはこのほど、強磁性体に常磁性金属、スカンジウム(Sc)(注2)を強磁性物質、ガドリニウム−ゲルマニウム(Gd-Ge)合金に添加することにより強力な磁石が製造できることを発見した(Chem. Mater., 2017, 29 (9), pp 3962–3970)。

強磁性物質と縁のないはずの非磁性物質の取り合わせでなぜ強力磁石ができるのだろうか。

 

(注1)エイムズ研究所(https://www.ameslab.gov)はDOEがアイオワ大学内に設立し運営委託する研究所で、NASAのエイムズ研究センターと異なる。745名の研究者の多くはアイオワ大学を中心とした研究者で、大学内委託研究所の代表といえる。キャンパス内に近い研究環境で境界融合研究の必要なエネルギー科学で実績を上げている。研究環境が隣接するあるいは同じキャンパス内にあることで、連携の効率が上がる。

(注2)スカンジウムの添加で合金の性質が大きく変化することは古くから知られていた。例えばアルミニウムに添加すると結晶粒成長が抑制され機械的強度が増強される。

 

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Credit: twitter.com

 

(Gd1–xScx)5Ge4へのスカンジウムの添加は強磁性相互作用を増強するが、これにはスカンジウムの3d電子が関わっている。スカンジウムの添加量が20%を超えたところでキュリー温度が増大し、カイネテイックアレスト(注3)やヒステリシスが消失する。

(注3)特定の温度(カイネテイックアレスト温度)でマルテンサイト変態が停止する現象。

このスカンジウム添加効果はPu5Rh4型ミクロ構造が形成されるために1次項(磁気変態)が抑えられ、2次の項(強磁性秩序)が優勢となることが第一原理計算でも確認されている。

 

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Credit: Chem. Mater.

同様な常磁性金属添加による特異な磁性発現は他の系でも起こり得ることもわかっており、この原理による新しい強力磁石の研究開発に期待が集まっている。

 

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