X線CTによるバッテリー反応のオペランド解析

化学反応・デバイス動作中の計測技術であるオペランド計測には、基本的に「その場・実時間のナノツール」が有効である。光電子分光からX線回折・散乱まで様々な手法が利用されている。それらの多くが高輝度X線ビームを必要とするため、最新の放射光施設や高輝度レーザー光源が登場すると、バッテリー科学はオペランド計測で研究が集中し、研究成果が続々と報告されるようになった。

 

 

ナノ科学を黎明期と実用材料への展開に分けて考えると、後者ではナノ構造による「問題解決型」の研究展開が精力的に行われている。ここではオペランドX線トモグラフイがバッテリーサイエンスに与えるインパクトを考えてみたい。この記事は最近の解説記事(J. Phys. D: Appl. Phys. 49 404001 (2016))を参考にして整理したものである。

これまでX線CTはその多くの適用が静的な3次元形状観察であったが、バッテリー科学ではエネルギー貯蔵デバイスにおける複雑な電極反応と輸送プロセスへの適応となる。とりわけバッテリー科学の焦点はエネルギー密度の追求と充放電サイクル特性の改良であった。この分野でX線CTはどのような役割を果たすことができるのだろうか。

この解説では応用例としてZn-O、Na-O、M-S系バッテリーを取り上げ、樹状突起の形成や電解質の消耗などバッテリー性能を低下させる因子を調べた研究を取り上げ、バッテリー科学へのオペランドX線CTの寄与を紹介している。この分野は日進月歩であるので最新の放射光源を利用した装置の性能はさらに進歩している。

 

Schroder 2016 J. Phys. D3A Appl. Phys. 49 404001

Credit: J. Phys. D: Appl. Phys.

 

上の図のa、bはそれぞれ放射光(BESSYII)とX線発生装置を光源としたX線CTの原理を模式的に示したものである。発散が小さく平行なビームの放射光では従来のCTと異なる方法で断層イメージを計測する。通常のCTでは対象物の周囲360度の透過データを連立して解くことで輪切りイメージを構築し、重ね合わせて3Dイメージを得るもので、空間分解能はミクロンである。一方、反応などの時間変化の追跡には透過X線イメージでシンチレータを発光させて光に変換し計測によって2Dイメージを同時計測(a)が適している。

 

4Schroder 2016 J. Phys. D3A Appl. Phys. 49 404001

Credit: J. Phys. D: Appl. Phys.

 

上の図はオペランド測定の結果で、左右がそれぞれ充電後、放電後の3Dイメージを示す。電解質(KOH(6M/L)水溶液)により放電後でZn正極表面に過酸化物粒子が析出している。

X線CTの空間分解能は大幅に改良され、本格的なオペランド解析が広く行われるようになった。下の装置はレドックスフロー電池のオペランド検察セル(J. Phys. D: Appl. Phys. 49 434002 (2016))で、実際のレドックスフロー電池の構造を模したセル中の反応イメージ計測で格段に電極反応の理解が進むものと期待されている。

 

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Credit: J. Phys. D: Appl. Phys.

 

現在、様々なバッッテリーを対象としたオペランド計測はX線CT以外にも世界の放射光で最も競争が激しい研究分野となっている。ナノ構造でバッテリーの性能が飛躍的に向上することが相次いで報告されているが、オペランド計測の寄与が大きい。

オペランド計測の利点は実際に使用される状況下で反応を解析することによって、ボトルネックとなっている電極への直接的なフイードバックが行え、研究開発の効率が大幅に改善された。日本がリードするバッテリー分野のリードを守るためにオペランド計測技術が不可欠である。放射光科学もオペランド計測によって、完全に「実用的な」ナノツールの仲間入りを果たした。元素を特定して解析ができることは、他のイメージング手法に優っているが、空間分解能においてはナノ世界に手が届いたにすぎない。空間分解能や時間分解能などのさらなる発展には光源と計測技術を両輪として開発を進めていく必要がある。

 

 

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