ナノテクによる水浄化技術〜淡水化と放射能汚染除去

福島第一事故を契機に世界中で個人向けの汚染水の浄化装置が市場に出回った。これまでも水道の蛇口に取り付ける簡易型の浄化装置やアウトドアで河川の水を飲料水とする携帯型などは市販されていた。一方、福島第一では大量の汚染水処理には多核種除去設備(ALPS)などを含む複数の浄化設備で処理される。汚染水中に含まれるCsおよびSrの濃度を下げてから、多核種除去設備(ALPS)でT(トリチウム)以外の放射性物質が取り除かれる。

 

海水の淡水化技術

海水の淡水化とは海水に約3.5%含まれるNa、Clイオンを濾過して淡水(0.05%以下)にすることである。SI単位(pm)表記でNa+とCs+、Sr2+のイオン半径は95、169、113であり、Cl-は181となる。したがって海水の淡水化で原理的にはCs、Srイオンは取り除くことができる。

実用化されている海水の淡水化には主に2種類ある。海水を蒸発して水蒸気を冷却し水に戻す蒸留法と海水に浸透圧に打ち勝つ圧力をかけて逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane)で濾過する方法である。前者は多段式フラッシュ法と呼ばれ、高純度の淡水を製造できるが、熱効率が悪い。国内企業がプラントを輸出し電力が豊富中東では世界最大100万トン/日の規模まで、大型装置が稼働し海水を水資源としている。

後者は残存する塩分濃度が多段フラッシュ法(5ppm)の20倍程度となり純度で劣るが大電力を必要としない経済的な手法である。日本の誇る逆浸透圧膜の技術が世界に広まりつつある。イスラエルの世界最大のプラントでは33万トン/日と規模においても多段フラッシュ法に迫る。

 

淡水化へのナノテクの活用

加湿器の原理で超音波で粒子の細かいナノミストを発生させ、回収して水に戻す際にミストの質量で分離精製機能を持たせることができる(霧化分離装置)。この技術では蒸発の熱源が不要となるので、エネルギー効率を高め低コストの淡水化が可能となる。

 

多孔質グラフェン

多孔質膜を水分子だけが通過できるように設計された多孔質グラフェン膜が水分子フイルターとして究極の逆浸透膜へ応用するという試みがある。グラフェンは単原子層2D炭素格子であるが、一部を欠損した多孔質グラフェン膜(下イメージ)の水分解電極への応用が報告されている。

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Credit: pitt.edu

東北大学の研究グループは多孔質グラフェンの水蒸気発生効率を高めて太陽熱エネルギーの活用技術を開発した。また同大学は多孔質グラフェンの水分解電極へ実用化を目指した量産化技術も開発している。

一方、多孔質グラフェンを用いた逆浸透膜による淡水化も可能性が示されたことで、淡水化技術へのナノテク利用が大きく進展すると考えられる。大電力を必要とせず放射性イオンを除去できるかもしれない。廃炉への道のりは長いがナノテク利用技術による汚染水の処理など期待できる分野もある。

 

 

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