3Dバッテリー最前線〜スピンオフ企業で実用化

携帯機器やEVの普及でLiイオンバッテリーの開発競争が激しい。運転しながらチャージステーション探しに一苦労するEVや暇さえあれば充電しなければならないスマホは持ちたくないだろう。80%充電30分でもガソリンを入れる1分に慣れると苦痛だし、急いで出かけるときにはスマホ充電の余裕はない。

 

Liイオンバッテリーは究極の電気化学の応用なので、これまでの研究は主役である電極材料に集中して行われてきた感があるが、基本的な電極材料の組み合わせが決まると、ナノ科学で3D化する研究が加速して飛躍的な性能向上が現実になろうとしている。

 

ナノポーラス銅の応用

コロラド大学化学教室のPriet教授は銅を用いて3Dバッテリーを製造するため大学が出資するスピンオフ企業Priet Batteryを立ち上げた。98%が空洞のナノポーラス金属銅(Copper foam)を3Dバッテリーのコアに使うアイデア(下図)はポーラス銅を負極材料として、セパレータ電解質膜(Cu2Sb)で被覆してから正極材料(を成長させた3D構造により、エネルギー密度を飛躍的に向上させることが可能である。

ポーラス金属銅で表面積を60倍にできるため、電力密度が14,000W/L、エネルギー密度650Wh/Lと現在のLiイオンバッテリーより大幅に向上する。これまでもコロラド大学の研究グループは3D化に取り組んできたが(Mat. Res. Bulletin 36 (2011) 523)、新型3Dバッテリーではポーラス銅へのCu2Sbの電解被覆がキーテクノロジーとなる(JACS 230 (2008) 10656)。

 

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Credit: Priet Battery Company

 

なおナノポーラス金属を水の電気分解触媒に応用した例も報告されている。オーストラリアのニューサウスウエールズ大学の研究グループは2015年にニッケルのナノポーラス表面(正極)にニッケルと鉄の水酸化物を触媒として被覆して電圧270mAで1A/cm2という高い電流密度が得られることを発表している。

水電気分解・光触媒でもナノ構造で表面積を稼ぐことで高性能化が期待できるので、バッテリー科学も水分解・人口光合成触媒も共通の課題となrった。ナノポーラス材料は密度が低く泡にように軽いため、"Foam"と呼ばれている。

 

超高速充放電を可能に

KAISTの研究グループも網目構造に被覆したTiO2ナノ粒子を用いて高速充放電が可能な3DLiイオンバッテリーを開発した(Avanced Functional Materials May 18, 2016)。新型バッテリーは従来の正極(炭素電極)を直径6nmのTiO2ナノ粒子と3D網目構造のグラフェンで置き換えた。このバッテリーは現在のスマホのバッテリーを代表する130mAh/gの充電速度は1分となり、これまで2時間かかっていた充電が120分の1に短縮できる。

研究グループはCVD法で作製された網目状のグラフェンにTiO2ナノ粒子を電解成長させて被覆することによりポーラスな電極にLiが容易に取り込まれるため充放電時間が短縮できる。

 

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Credit: KAIST

 

このほかにもイリノイ大学の研究グループの3DLiイオンバッテリー(Nature Comm. 4 1732 (2013)や3Dプリンタで電極を微細加工するもの(Advanced Mater. 17 June 2013)まで様々な3DLiイオンバッテリーが開発されている。

こうした3DLiイオンバッテリーで充電時間が1/100になると別の応用も開けるだろうし、煩わしさから解放されて快適な生活を送ることができるだろう。

 

スピンオフ企業で実用化

最近の新型バッテリー開発の多くは研究所の中から生まれたキーテクノロジーを核としてスピンオフ起業を立ち上げ、投資家を呼び込んでスケールアップするものである。独創的な技術に直接投資して、大型の工場建設で一気に市場に送り込む事例が急速に増えていることからもバッッテリー事業で研究・開発と生産ラインの距離が近くなっていることは明らかである。大学・研究所からのスピンオフ事業は閉塞感のあるハイテク産業を活性化させる原動力となっている。

国が企業を集めて組合を作り公的資金で研究開発を主導したのは昔の話、ハイテク産業では研究開発の時短が求められ開発グループと製品企画グループの距離が近い必要がある。大学・研究機関はキーテクノロジーを持った研究者の製品化を担うスピンオフ企業を支援することが重要になるし、国が間接的に企業を支援するしくみが時代遅れだとしたら、予算を大学・研究所につけて起業化支援を支援すべきだし、法人税を減らして間接的にスピンオフを支援するのも良いかもしれない。

またスピンオフ企業がやりやすいように法人化の手続きを緩和するのも重要である。起業・休業・廃止手続きが厳しすぎるのではないだろうか。

 

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