放射線計測

ガスカウンターの優等生—比例計数管

 気体の電離作用に基づく放射線検出器は核物理の世界では、「ガスカウンター」だが、一般に「ガスカウンター」といえば家庭のガス使用メーターを連想するかもしれない。ガスカウンターのなかで電圧の低い領域で使われるイオンチェンバーについてはかいたので、今回はガスカウンターの中では最も広くX線回折計で使われる比例計数管(Proportional Counter, PC)について説明したい。物質科学の研究者なら毎日使うだろうし、そうでない場合でも大学の学生実験で一度はお世話になった検出器である。

ホールボデイカウンタ

 福島の事故で被曝の有無を調べて欲しい住民が殺到したが配備数が少なく、ガイガーカウンターのように持ち運びが容易ではないので、当時はパニックを引き起こした。原子炉関係者は入室と退出時にホールボデイカウンタの測定を受け、差が被曝量となる。しかし全ての核崩壊をモニターするわけではないので、日頃から原理と特性を頭にいれておけば慌てなくてすむ。

体内に居座る悪魔-Sr

 福島の場合、拡散したCsとSr比率は 10:1 以下だと言われている。汚染が深刻な場所では高線量のCsの存在が確認できるので、どうしても線量を手っ取り早く下げたい、となるとCs対策が中心にくる。Csには最大400倍の生物濃縮があることもあり、米国西海岸の魚介類の放射線レベル増大を福島起源(注)とする報道や専門家のコメントが相次いでいる。放射線レベルはCs134とCs137の合算値として表現されることが多い(下図マップ)。

 

半導体産業の隠れた恩恵−SDD

 SDD (Silicon Driftdiode Detector)は半導体検出器、SSD(Solid State Detector)の仲間であるが、省略が似ているので混同されやすい。SDDはシリコン素子である点ではシリコンSSDと同じである。SSDではシリコンとゲルマニウムが一般的である。

半導体検出器(Solid State Detector, SSD)

 先に紹介したシンチレーション検出器は最も多く使用されている固体検出器であるが、そのエネルギー分解能はせいぜい検出フォトンの40%どまりなので、元素固有の蛍光X線が重なって分離できない場合がある。そこで元素を特定したり、核種を同定するにはもっと分解能の高い検出器が必要であった。半導体としてはシリコンおよびゲルマニウムが用いられる他、CdTeなど少数ではあるが化合物半導体も使われる。

CTとPETの知識−病院で慌てないために

 21世紀はナノテクノロジーの発達と並行するようにイメージング技術が際立った発展を遂げた。医療現場では通常はミクロンスケールのイメージングが多いが、最先端の放射光では100nmのナノビームの空間分解能も実現されている。ところで断面像といえば2Dイメージだが、断面をすこしづつずらして撮像していき最後につなげることで3D(立体)イメージが構築できる。米国では死体を(凍結し)1mmずつスライスして、実物の人体輪切り標本を作製したという。ぞっとする話であるが、そこまでせずに人体内部の立体像が得られる。具体的にはどのような手法があるのだろうか。

シンチレーション検出器

 シンチレーション検出器はX線(γ線)を波長変換して、可視光を電気信号として計測する。2段階の変換による検出器で、一見回りくどいようだが、最も広範囲に利用されている検出器といえるだろう。高エネルギー物理から原子力にいたる幅広い分野で広範囲に使われている最もポピュラーな検出器のひとつといえる。ではいったい何故、そのような変換が必要なのだろうか。ここではX線を吸収して可視光を放出するシンチレーションの原理と計測系について簡単に説明する。シンチレーター結晶の写真を以下に示す。 中央の巨大な単結晶がシンチレータ結晶でその周りあるのは検出器本体である。用途により様々な形状のものがあるが最も一般的なものは円筒状のフォトマルの先端にデイスク状のものが取り付けられた写真に示すタイプである。

イオンチェンバー —ガス分子のイオン化で放射線を計測する(第2回)

 電離によって電子と正イオンが対として生成された後に衝突し中性分子にもどる過程を再結合と呼ぶ。再結合の起こる割合は生成されたイオン数に比例するが、その係数(再結合係数)は気体の種類によって異なる。イオン電流(I)は正イオンの移動と電子の移動の寄与の和で与えられるが、それぞれは電場により生じる項と拡散により生じる項からなる。電極間の容積に対してこれらの積分を行うことにより、電子と正イオンによる全電流密度が得られる。実際に積分を行うためには電極の形状を決める必要がある。ここでは最も簡単で広く放射光の強度モニターとして用いられている平行平板型イオンチェンバーについて考えてみることにする。

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