生化学手法でみたニュートリノレス2重β崩壊

β-崩壊では原子核内の中性子が陽子に変わり電子と反電子ニュートリノを放出する。β崩壊Se76はGe76よりエネルギーが大きいため不安定で2重β崩壊が生じる。これは原子核内の2個の中性子がほぼ同時に陽子になるβ崩壊のひとつだが、原子核内の中性子2つが陽子2つに変わり、電子と反電子ニュートリノが2つずつ放出される。

2重β崩壊では2つの陽子が2つの中性子になり、2つの電子ニュートリノを放出して2つの軌道電子を吸収する場合もあるが、ニュートリノを放出しないニュートリノレス2重β崩壊も予測されている。もし発見されればニュートリノがマヨラナ粒子であることができるとして注目されてきた。

 

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Credit: wwwkm.phys.sci.osaka-u

 

ニュートリノレス2重β崩壊

テキサス大学オースチン校を含むNEXTコラボレーションの研究チームは、ニュートリノの詳細や反物質アンバランスの謎に迫る研究を進めている。ニュートリノがマヨラナ粒子であれば反ニュートリノとニュートリノは同じ粒子となる。この仮定が証明されれば反物質アンバランスが説明できることになる。

 

研究チームはニュートリノレス2重β崩壊検証実験にイオンの蛍光を観察する生化学的手法を活用する計画である(McDonald et al., Phys. Rev. Lett. 120, 132504, 2018)。

ニュートリノと反ニュートリノが同一粒子であれば、2つの反ニュートリノは打ち消し合い、ニュートリノレス2重β崩壊が観測されることになる。この現象の観測確率は極めて低くXeが崩壊してBaになる過程で1年に1度程度の頻度になるため実験が難しいが、もし起きればBaイオンと2個の電子が同時に発生する。

 

TPCが挑む反物質アンバランスの謎

研究チームはXe中のBaイオンと2電子を観測する新しい検出装置(下図)を提案している。それがXe Time Projection Chamber(TPC)である。TPCは日本でもKEKに置いて開発が進められており、ヒッグスボソンの発見以後の素粒子物理の進展が期待されている。

 

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Credit: inspirehep

 

原理となる蛍光観測技術は脳内のニューロンからニューロンへのCaイオン移動の際の螢光放出現象のマルチ検出と同じである。CaイオンとBaイオンの相似性を考えればこれは自然な発想であった。研究チームは蛍光物質FLUO-3がBaイオンにも適用できることがわかり、ニュートリノレス2重β崩壊の観測に使えることが明らかになった。

 

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Credit: inspirehep

上図はCCDで観測されたBaイオンによる明るい表面付近と暗い深部の螢光分子を示す。加速器の大型化が限界に近づく中でテーブルトップの計測システムでニュートリノレス2重β崩壊が観測可能の時代となったことは興味深い。

 

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