現実的になるテラヘルツ帯Wi-Fiネットワーク

ブラウン大学の研究チームはテラヘルツ帯のデータ通信パケットが部屋の中を減衰(データ損失)しないで反射を繰り返すことを明らかにした。このことからテラヘルツ帯を用いたワイアレス通信ネットワークの可能性が強まった。

 

今日のWi-Fi接続にはマイクロ波が使われているが、情報量の増加とともに帯域の拡大傾向にあり、マイクロ波の限界に達しつつある。マイクロ波を越える周波数帯であるテラヘルツ帯が利用できれば、現在の100倍の情報量のネットワークが構築できる。

現在、研究開発が進んでいる5Gは6GHz以上の帯域を使って10Gbps以上の通信速度を実現する。テラヘルツ帯は法規上は3THz以下のマイクロ波で、物質の吸収が大きいので通信には適しないとされてきた。

 

しかしテラヘルツ通信技術は未成熟でテラヘルツ帯は未知の周波数帯でもある。問題のひとつは指向性にある。この周波数の電波は直進性が強いため、指向性が強すぎる。常に受信アンテナを送信器に向けていなければならないとされるが、実は詳しい性質はよく知られていない。

これまではテラヘルツ帯の電波はパワー損失が大きくマイクロ波のように反射を繰り返して、建物内での送受信はできないと考えられていたが、ブラウン大学の研究チームはパワー損失は通信に支障をきたすほど大きくないことを明らかにした(Ma et al., APL 3, 051601, 2018)。

 

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Credit: Brown Univ.

 

研究チームはテラヘルツ帯のことなる4周波数で実験を行い、部屋の中で反射を繰り返したあとでの通信誤差を測定してビット誤差が通信ネットワークに影響を与えるレベルよりはるかに小さいことを実証した。直進波が遮られる状況でも反射波の回り込みで、通信が継続できることが確認された。下図は屋外のテラヘルツ帯通信実験のセットアップ

 

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Credit: Nano Comm. Networks

 

またテラヘルツ帯の電波は長距離を移動すると円錐状に広がることも屋外実験で確かめられた。この広がりのため周辺の障害物で多重反射を繰り返して、回り込み電波が直進電波を遮っても通信を維持できる。このためテラヘルツ帯のWi-Fiネットワーク構築が現実味を帯びてきた。

 

地面の草など水分の吸収が大きいので水分による損失が大きいが、コンクリート舗装など水分の少ない地面もあるため、全体としては反射波の回り込みで通信条件が確保できるとされる。電磁波敏感症など高周波の人体への影響が5G周波数でも懸念されているため、テラヘルツ帯での人体への影響は今後の研究課題となる。

 

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