HRTEMイメージングによるLiイオンの不均一インターカレーションの可視化

 

エネルギー密度で他を寄せつけないLiイオンバッテリーであるが、安全性や寿命、充電時間などの課題も残る。安全な全固体型バッテリーの研究が進められているが、未解決の課題はLiイオンの受け手であるナノ粒子へのインターカレーションの微視的構造の解明にある。

 

ブルックヘブン国立研究所の研究チームはLiイオンバッテリーの動作中にLixFePO4ナノ粒子中のLiイオン濃度が極少となる奇妙な現象を発見した。Liイオン濃度が極小となる現象の解明で、充電効率を改良できると期待されている(Zhang et al., Sci. Adv. 4:eaao2608, 2018 )。

電流の担い手であるLiイオンは電流が流れると一方の電極から他方へ移動する。これまでは放電と共に、インターかレーション化合物中のLi濃度は単調に増大していくと考えられて来た。しかし電極のLixFePO4ナノ粒子中のLi原子濃度は極小値を持つことがわかった。

研究チームはオペランド実験によってバッテリー動作中のLiイオンの濃度の分布をリアルタイムに観察することで、このことを見出した。Liイオンはナノ粒子中に均一に増加せず、局所的な不均一性(スピノーダル領域)を生じる。

 

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Credit: BNL

 

ミクロなLiイオン分布の不均一性は格子歪みを発生させることで、バッテリー寿命を短くする恐れがある。Liイオンがインターカレートされると、Liイオン周辺のLixFePO4格子は押し拡げられて局所的な歪が発生する。充放電を繰り返すとその歪みが増幅されて欠陥の成長つながる。研究チームはHRTEMのGPA(Geometrical phase analysis)(注1)でナノ粒子1個の内部のLiイオンマッピングに成功した。

この研究ではオペランドHRTEMとイメージ解析アルゴリズムGPAを組み合わせて局所的な格子定数マッピングを得るところがポイントとなる。GPAはX線における位相問題に対応するもので、歴史は古いが最近のHRTEMイメージング(注2)でフェーズフイールド計算(注3)と組み合わされて真価を発揮することとなり重要性が見直されている。

 

(注1)M. J. Hytch, Analysis of variations in structure from high resolution electron microscope images by combining real space and Fourier space information. Microsc. Microanal. Microstruct. 8, 41–57 (1997).

(注2)Y. Zhu, J. W. Wang, Y. Liu, X. Liu, A. Kushima, Y. Liu, Y. Xu, S. X. Mao, J. Li,
C. Wang, J. Y. Huang, In situ atomic-scale imaging of phase boundary migration
in FePO4 microparticles during electrochemical lithiation. Adv. Mater. 25, 5461–5466 (2013).

(注3)場の秩序変数を用いた不均一場における連続体モデルによるメゾスケールシミュレーション。

 

放射光によるイメージング技術は進展が著しい。バッテリーの動作環境をその場で調べるオペランド実験はバッテリー開発に強力なツールとなっている。原子イメージングは電子線の強みであり、GPAなど高度な解析法とHRTEMの組み合わせは試料をチップとした原子イメージング手法(Atom Probe Tomography)(3D原子イメージング(Atom Probe Tomography, APT)について )よりも応用範囲が広いと思われる。

 

 

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