運動量分解電子エネルギー損失分光で観測されたエキシトニウム(励起子の凝縮)

半導体や絶縁体の励起で電子と正孔のペアがつくられ、クーロン相互作用によって束縛状態になったという励起子の概念は新しいものではない。モット絶縁体や高温超伝導の本質を理解しようとすれば、スピン自由度の縮退や電子の局在状態の基礎となる励起子の凝縮問題は避けては通れない。

 

電子と正孔のペアであるためフェルミ統計に従うボース粒子と考えられているが、最近、東大の研究グループがボース粒子が集団で示す量子力学的な相転移現象であるボース・アインシュタイン凝縮の検証に成功しているが、イリノイ大学アーバン分校の研究グループは遷移金属カルコゲナイド(ノンドープTiSe2)で世界初となる励起子の凝縮の直接的な観測に成功した。

この励起子凝縮状態を「エクシトニウム」は1960年代にハーバード大のハルピリン教授によって提案された概念で、50年以上たってから今回の実験で初めて検証されることとなった(Kogar et al., Science 358, 1314, 2017)。

 

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Credit: physics.unifr.ch

 

電子が叩きだされて生じる正孔の粒子的な振る舞いには周囲の電子集団との相互作用が関係している。粒子的な振る舞いによって超格子のパイエルスギャップが発現する事実はこれまで、実証実験はなかった。研究グループは非弾性X線産卵や中性子散乱より価電子励起に敏感な特徴を持つ運動量分解エネルギー損失スペクトロスコピー(M-EELS)を改良して、励起電子の運動量とエネルギー分解測定を可能にした。

低エネルギーボソン粒子の集団励起を観測することが可能なM-EELSで運動量によらず電子正孔ペアの観測が可能となった。190Kの転移温度で励起子凝縮が個体中で凝縮する様子が初めて観測された(下図)。

 

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Credit: Science

 

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Credit: Science

 

開発されたばかりのM-EELSは低エネルギー(ソフトモード)電子励起の研究に強力な実験手法となると期待されている。これまで超高真空中に精度の高いゴニオメーターを持ち込むことは難しかったが、最近は巨大なゴニオメータ上に超高真空チェンバーを載せることなくレーザー干渉計によって回転角度精度が格段に向上した。コンパクトな運動量分解電子分光は今後ますます盛んになるとみられる。

 

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