X線CTの意外な使い方〜カーボンキャプチャに貢献

スタンフォード大学キャンパスと隣接するメデイカルセンターには20台ほどのX線CTが設置されているが、内2台は地下室でエネルギー基礎科学の研究開発に使われている。

 

X線CTといってもスペックも価格もピンからキリまであり、スペックも最高空間分解能は数μmというものから医療用のスループット重視型まで各種ある。何も医療用CTを使わなくても産業用で十分ではなどと余計なことを考えてしまうが、おそらく医療用ではソフトが充実しているのだろう。

2008年に設置された医療用CTはGE社のものでスペックは以下のような標準的なもの。

  • axial and helical (continuous) scanning modes
  • scout scans
  • kV range of 80 - 140
  • mA range of 40 - 400
  • minimum slice thickness of 1 mm
  • Gantry tilt range of +/- 30 degrees
  • 2 Silicon Graphics Indigo host computer workstations
  • Magnetic optical disk drive MAXOPTIX T4-1300
  • CD-ROM Drive
  • Network image transferring system

 

意外なCTの利用法

これらの特殊なCTスキャナーは高圧下の油、水、気体が岩石中の流動を可視化するために使用される。実験はミニチュアスケールで岩石が形成されるときの物質移動を再現する。もともとは米国が力をいれているシェールオイル掘削の安全性を調べる目的であった。(CT2台の購入費用となるとエネルギー予算(DOE)に頼ることになり、シェールオイル掘削の安全保障は格好の課題となる)

 

36 newtechnique copy

Credit: Ker Than

 

世界全体で1日で1億バレル/日燃焼される石油は代表的な化石燃料で、今後50年は枯渇しないと考えられている。排出量規制が進まない現在、EVシフトも積極的な動きがある一方、シェールオイルの増産でCO2排出に拍車がかかることになる。

スタンフォード大の研究グループはCTを駆使した研究で、岩石の隙間から採取するシェールオイルでCO2排出を調べ新しい知見を明らかにした。

 

カーボンキャプチャが必要になる理由

排出量規制で規制が進まない以上、止めることのできない排出に並行してキャプチャの努力が不可欠になる。そのひとつがガス注入による石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery, EOR)と呼ばれる手法である。EORでは既存の油田に高圧ガスを注入して、原油の粘性を低下させ抽出を容易にするものである。

 

riskanalysis

Credit: Los Alamos National Laboratory

 

通常の掘削では生産量が多い油田でも50%の原油を残すまでの掘削となり、それ以上汲み出すことが難しくなるが、シェールオイルではさらに困難で効率が悪い。EORを用いると5%まで掘削が可能となる。

 

EORで地下に注入されるCO2

原油に多く溶け込んでいるCO2はEORで用いる圧力ガスに最適である。そのため過去20年にわたり、掘削会社はEORで地中深く高圧CO2を送り込んできた。研究グループの狙いは大量にCO2を地中に閉じ込めることで大気中の濃度を減らすことである。

掘削会社は掘削が採算がとれる期間(約20年)だけCO2を注入して、その後は閉鎖してしまう。しかし注入を停止した後、岩石がどうなるかはこれまで知られていなかった。研究グループは時間軸を含む4次元計算機シミュレーションで注入されたCO2と地中深くの岩石の欠陥の相互作用を3,000-4,000年後まで含めて調べている。

ガス注入リスクのひとつは高圧ガスが欠陥を増幅して破壊することでそうなると地下水汚染を引き起こし農業に悪影響を及ぼす。また裂け目が発達して毒性を持つガスが地表に吹き出す恐れもある。さらに注入されるCO2が不純物を含むため原油を汚染することも考えられる。CO2に伴うリスクを減らすのには、理想的にはCO2が岩石と結合して安定な鉱物に変化させることであるが、時間がかかる。一方、塩分を含んだ水に溶け込ませるか、小さな気泡を回収することは時間がかからない。

 

EORとカーボンキャプチャ

CT実験と計算機シミュレーションによって、安全なCO2の閉じ込め(カーボンキャプチャ)が確立しつつある。EORとCO2キャプチャを並行して行うことで「清浄な」原油採掘が可能になると期待されている。CO2の地中あるいは海底貯蔵技術はアイルランドが先行して取り組んでおり、今後50年間排出が規制困難なCO2は積極的に地中深くに閉じ込めるカーボンキャプチャ技術に頼るしかなさそうである。

CO2を閉じ込めるだけではなく液体燃料(カーボンニュートラル燃料)にするという方法もある。空気中に排出されてもリサイクルになる点で化石燃料とは一線を画す。エネルギー基礎科学には50年以内にCO2閉じ込めと有効利用を可能にすることが期待されている。

 

カーボンニュートラルに関する記事

1, カーボンニュートラルが崩れたバイオ燃料
2, カーボンニュートラル燃料を製造する光触媒
3, レーザー加工グラフェンを用いた水分解反応の高性能電極
4, エネルギー科学最前線2017〜CO2還元と光触媒の新展開
5, 水分解、CO2分解反応の高性能サイクル・レドックス触媒
6, 空気中の酸素を使ってメタノールを製造
7, 空気中のCO2で燃料合成〜ナノ触媒による炭素固定
8, 回収された大気中のCO2の海底貯蔵
9, CO2を水と電気でCOに還元〜人工光合成の進展

 

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.